当局検査の実務(2)


号外の当局検査の続きです。当局検査について楽観派の方たちは、当局検査を何度も受け、褒められた話ではありませんが、10年程前に私が勤めていた会社で、営業停止という重い行政処分を受けた経験がある私からすると、発想できない考えた方をするときがあります。

<楽観派>
「役員も社員も多忙な時期であるという理由で検査を断ることはできるか」という質問を受けることがあります。回答は「できません」です。金融商品取引業者等は、内閣総理大臣の登録を受け、金融庁の管理・管轄のもとで業務をすることを認められている特別な地位で、金融商品取引法上、金融庁や証券取引等監視委員会または財務局の要請を拒む権利はありません。

法律的な細かい話をすると、「それでは登録制ではなく、まるで許可制ではないか」という話になりますが、もともと、証券取引法は昭和40年から平成10年まで証券業は許可制としていましたので、金融商品取引業者等の登録制も、実質的には許可制です。

<悲観派>
「金融庁の検査が怖くて胃が痛い」というコンプライアンス担当者の声は、数多く聞きます。多くの場合、「経験もないのに、突然、コンプライアンス担当者に任命された」とか「コンプライアンス担当者は私一人で、すべての責任を私一人が負っている」という不安の声です。

まず、ここを混同している方が大勢いらっしゃいますが、検査をするのは金融庁ではなく、証券取引等監視委員会か、証券取引等監視委員会から委任された財務局です。金融庁は監督権限、証券取引等監視委員会が検査権限を持ち、監督権限と検査権限は分離されているというのが原則です。

次に、コンプライアンス担当者が一人である会社は珍しくありません。むしろ、証券会社を除けば、コンプライアンス担当者は一人である場合の方が多いという印象です。証券会社でさえ、コンプライアンス担当者が一人という会社も実際に知っています。ですから、コンプライアンス担当者が一人であることを悲観する必要はありません。

また、検査は特殊な行事ではありません。法令通り、社内規則通りに業務が運営されている限り、何か指摘されることは絶対にありません。

以上のように、当局検査に対して、極端に悲観的になることはありません。

<社内規則の重要性>
唯一気にすべきことといえば、社内規則がきちんと整備されているかどうかという点です。拙著「金融商品取引法対応マニュアル―すぐに使えるサンプル付き!」に、最低限必要な社内規則のサンプルを作成して掲載しましたので、参照してみてください。もっとも、社内規則は各社各様ですので、体裁などを参照していただく程度で、実質的なものは、各社の事情に応じて作成するしかありません。

社内規則の作成のコツは別の機会にお話しする予定です。一般論として、社内規則作成の際、うっかりやりやすい注意点をひとつご紹介すると、社内規則に「定期的」という言葉はできるだけ使わないようにすべきです。もちろん、定期的にやらなければないことには定期的という言葉を使う必要がありますが(コンプライアンスプログラムの更新など)、簡単には使わないことです。会議を定期的にやるとか、社内検査・内部監査を定期的に行うなど、聞こえはいいですが、定期的である以上、本当に一定期限ごとに実施しなければなりません。

「社内規則なんだからそんなに厳格にならなくてもいいのでは?」というのは大きな間違い。「自分たちで作った社内規則も守れない会社が、法律を守れるはずはない」というのが検査の前提だからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
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