コンプライアンス担当者への警告2


コンプライアンス担当者の仕事が大変なのは、法令のスペシャリストではなく、経営のジェネラリストである必要があるからです。

もう少し詳しく言うと、金融商品取引業者のコンプライアンス担当者は、「当然」、金商法関連法令や自主規制機関の規則は、すべて理解しておく必要があります。

さらに、理解した法令等諸規則と、自社のビジネスに具体的に落とし込む能力が「必須」です。

コンプライアンス担当者は、コンプライアンス担当者の責任で、会社で法令等諸規則違反が起こらない体制を整備する必要があります。

一方、経営のジェネラリストであるため、営業、経理、税務、リスク管理、バックオフィス業務を熟知しておくことはもちろん、経営戦略立案能力も身に着けていなければなりません。

コンプライアンス担当者の中には、スペシャリストであることに自負をもっている人が散見されますが、本来の姿は、法令等諸規則には、社内で最も詳しく、ビジネスを形作るパーツ(営業やバックオフィス業務等)についても、詳しい存在です。

前回お話した通り、コンプライアンス担当者は、ビジネスの成功のためにアクセルを踏む存在でなければなりません。しかも、法令等諸規則に社内で最も詳しいがために、絶対に、法令等諸規則違反をしない「安全な道路」を制限速度いっぱいで走ることができる、社内でただ一人の存在であることも求められます。

私は、法令等諸規則を完璧に遵守しながら収益を最大化するために、1000人の役職員がいた会社で、大規模な組織改編を断行したことがあります。すべてのパーツが何をしているか、どうすれば最も効率的なビジネス展開ができるかが描けていましたので、法令等諸規則を遵守する体制をキープしながら、組織改革を行ったのです。

当然、物凄い反発を受けました。ただ、組織改革に着手する前に、経営者には、如何にこの組織改革が会社の収益の最大化につながるかを理解してもらっていたので、1年以上かけて、遂にやり遂げました。

この組織改革は、コンプライアンス担当者でないとできません。なぜなら、組織改革がコンプライアンス体制を犠牲にするようなことがあってはならないため、法令等諸規則に社内で最も詳しいコンプライアンス担当者でないとできないからです。

コンプライアンス担当者が絶対にやってはならないことは、法令等諸規則の遵守ばかりに目が行き、社内研修の準備やコンプライアンスプログラムの起案のために、机にかじりついていることです。

「でも、人が足りない」と言われそうですが、足りなければ採用すればいいんです。

「お金を出してもらえない」と言われそうですが、コンプライアンス部門の人員を増やす目的は、コンプライアンス部門の提案で、会社の収益を飛躍的に増やすことにあるのですから、コンプライアンス部門の人員を増やすと、どれだけ会社の収益が増えるのかについて、経営者にプレゼンテーションして、納得させればいいのです。

コンプライアンス担当者が忘れてはならないことは、余程、あくどい業者でない限り、経営者以下、役職員は、あなたがいなくても、法令等諸規則違反をすることは、めったにないということです。

コンプライアンス担当者がいなくても、コンプライアンス体制は維持できるということです。

ましてや、今は、99%が偽物という事実はあっても、金商法に詳しいと名乗る外部の専門家が大勢いるのです。あなた一人を雇うよりも、経験の浅い若手社員をコンプライアンス担当者に据えて、外部の専門家に協力を仰いだ方が、コストは安い可能性があるわけです。

今は、金融庁はそうでもないですが、財務局が形式的なコンプライアンス担当者の設置にうるさいのでコンプライアンス担当者は重宝される傾向にありますが、一方で、行政当局は、外部の専門家の起用を勧める傾向にあります。

この傾向が鮮明になれば、経験豊富なコンプライアンス担当者の設置は不要になります。

現に、この傾向、つまり、外部の専門家を起用し、コスト高のコンプライアンス担当者をリリースする傾向が、証券会社では始まっています。

法令等諸規則に詳しいだけのスペシャリストたるコンプライアンス担当者は、早晩、不要になることは、証券会社の傾向を見ても明らかです。

コンプライアンス担当者は、経営全般について、ジェネラリストになる必要があります。

逆にいえば、法令等諸規則に最も詳しいコンプライアンス担当者は、ジェネラリストにさえなれば、会社の中で最重要人物に確実になります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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