コンプライアンス担当者の責任1


傾向として、一種業者は、新規ビジネスを開始するなど、何かアクションを起こそうとするとき、必ず、早め早めに金融庁に相談しますが、二種業者、助言業者は、運用業者は、相談もなしに、ビジネスを進める傾向があるようです。

監督官庁である金融庁が嫌がるというより、困るのは、監督している「はず」の金商業者が、金融庁の知らないところで、ある意味勝手に、ビジネスの展開を考えている場合です。

金商業者は、金融庁の監督下にある以上、金融庁に逐一報告をしながら、ビジネスを進めることが求められます。

<監督上コンプライアンス担当者に期待される役割>
金融庁が、コンプライアンス担当者に期待していることは、金商業者と金融庁との間のパイプ役になることです。

私は、コンプライアンスを担当し始めたばかりの頃、このことに気づかず、金融庁に「報告が足りない」とやたらに怒られたことがあります。初めは、なんで怒られているのか、よくわかりませんでしたが、数年たってようやく気付いたことは、金融庁は監督官庁として当然の要求をしていただけだということです。

報告しておくと実はメリットがあります。証券取引等監視委員会の検査がスムーズになるのです。

証券取引等監視委員会が検査を行う際には、金融庁から検査対象先の金商業者の情報を入手します。このとき、逐一報告をしてあると、検査官は検査対象先の金商業者の業務運営状況が予めわかっているので、検査がスムーズに進みます。(金商業者の視点に立つと、早く帰ってくれる。)

報告していないと、検査官が事前に把握していた金商業者の姿と実際に検査に入って知った金商業者の実態とが食い違うことが出てきて、検査が難航します。

<検査上コンプライアンス担当者に期待される役割>
正確には、検査上ではなく、監督上になるかもしれませんが、コンプライアンス担当者は、会社のすべての業務を把握していることが求められます。

「すべて」というのは、営業部門や運用部門といったフロント部門の業務ばかりでなく、経理部門や業務部門(バックオフィス部門)を含みます。

コンプライアンス担当者は、会社のすべての業務を把握し、一切、法令違反・社内規則違反がないことを確認していることが求められているのです。

ということは、もし、会社に法令違反があったときに、「責任」は誰にあることになるでしょうか?

もちろん、「コンプライアンス担当者」です。

冗談ではなく、検査で法令違反が見つかると「コンプライアンス担当者の知識不足から法令に違反する行為が発見された」と検査終了通知書に書かれることがあります。

すると、会社としては、コンプライアンス担当者を社内処分する必要が出てきます。

これはコンプライアンス担当者にとっては厄介です。社内処分を受けてしまうと、例えば、転職するとき、履歴書の「賞罰」の欄に、社内処分を受けたことを記載しなければなりません。

記載していないと、金商業者に転職して「賞罰なし」と履歴書に書き、政令で定める使用人として履歴書が金融庁に提出されると、「罰はあるじゃないか」という突っ込みが金融庁から入る可能性があり、実際に突っ込みが入った人がいます。

<コンプライアンス担当者の権限>
私は、検査の結果、コンプライアンス部門の責任者や統括する取締役が解雇される例を見てきました。

このように、コンプライアンス担当者は、大変なリスクを負っています。だから、コンプライアンス担当者は、コンプライアンス業務に全力を尽くすと言いますか、がむしゃらに取り組まなければなりません。

「コンプライアンス担当者から外して!」

という声が聞こえてきそうですが、逆にいえば、コンプライアンス担当者は、会社において、絶大な権限が与えられているわけで(そのはずで)、経営の根幹にかかわることができる(はず)という点で、やりがいがある仕事であることは確かです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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