行政処分勧告


6月26日(金)、証券取引等監視委員会は、日本クラウド証券に行政処分をするように金融庁に勧告しています。

詳細は、こちらです。

<他人事と言える金商業者はいない>
同社が、行政処分勧告を受けた原因の一部は以下の通りですが、どの金商業者も他人事ではないはずです。

1 同社経営陣は法令遵守意識が不十分だった

2 社内規程を整備するなどの内部管理態勢が構築されていなかった

3 法定帳簿に記載不備があった

<経営陣の法令遵守意識>
詳細を私は知りませんが、公表された情報によると、経営陣は法令遵守意識が不十分だったと指摘されています。

証券取引等監視委員会が経営陣の法令遵守について指摘するときには、大きく分けて、次の2通りがあります。

1 経営陣の法令遵守意識が不十分だった(今回の例)

2 経営陣の法令に関する知識が不十分だった

「意識」が不十分と指摘される方が「知識」が不十分と指摘されるよりも重い感じがします。(知識なら覚えればよいが、意識は考え方や行動の改革が必要だから)

実務的には、金商業者の経営陣は、営業部門はもちろん、業務部門(バックオフィス)についても、業務の状況を常に把握し、法令遵守が行き届いているかどうかを(面倒でも)確認する義務があるということです。

<社内規則の整備>
社内規則の整備に問題があったと指摘されていますが、5月29日の平成26年改正金商法は、すべての金商業者に社内規則の整備と社内研修の実施を義務付けましたので、この指摘は、今後、増えることが予想されます。

「社内規則があれば法令違反は起きないとでもいうのか?」という疑問は愚問で、法令違反が起きないような社内規則を整備し、社内研修で役職員に周知し、社内規則の遵守状況が常にチェックできる体制を作ることが、平成26年改正金商法で求められたわけです。

<法定帳簿の記載不備>
今回の指摘は、法定帳簿の「作成」不備ではなく、法定帳簿はあったんだけれども、記載すべき事項のうち一項目が抜けていた(「記載」不備)という指摘です。

今回、記載不備を指摘された法定帳簿は、「取引残高報告書」です。

「法定帳簿って何?」という金商業者は論外ですが、金商法を斜め読みしている金商業者から「取引残高報告書なんて法定帳簿は金商業等府令第157条に記載がないじゃないか!」と言われそうです。

でも、あります。

同条第1項第1号イ(4)です。

ここに「契約締結時等交付書面」の写しが法定帳簿であると規定されていますが、この「等」が「取引残高報告書」です。

経営陣の法令遵守意識も社内規則の整備も法定帳簿の正確な記載も、基礎の基礎です。

内部管理態勢の検証作業(内部監査ではありません)を実施したことがない金商業者は、とにかく、今すぐ、内部管理態勢の検証作業を行い、基礎の基礎ができていることを確認する必要があります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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