分別管理義務違反


先週の金曜日、日本クラウド証券に対して金融庁が行政処分を行いました。

詳細はこちらです。

<分別管理義務違反>
行政処分の意味は、証券会社にはわかりますが、他の業態(二種・助言・運用)にとっては、わかりにくいと思いますので、解説します。

1 同社は、一種登録と二種登録をしている。

2 同社は、一種業務と二種業務それぞれにおいて、顧客預り金の適切な管理ができていなかった。

3 顧客預り金の管理方法は、一種業者としては「有価証券等管理業務」(保護預りと呼ばれる)、二種業者としては一定の条件のもとに行う「特定有価証券等管理行為」があるが、同社は、一定の条件を満たしていないため、すべての顧客預り金の管理方法は、一種業務である「有価証券等管理業務」に該当する。

4 有価証券等管理業務として顧客預り金を管理する方法は、顧客預り金に相当する額を信託しなければならない。

5 同社は、顧客預り金に相当する額を信託していなかった。だから、金商法第43条の2第2項違反。

二種業者の方で金商法の条文を読んでいる人は、「適用条文は、第43条の2第2項ではなく、第40条の3の間違いじゃない?」と思うかもしれません。

ここで、クリアーにしておかなければならないことは、同じ「分別管理」という言葉を使っていても、一種業者が気にする分別管理と、二種業者が気にする分別管理とは意味が違うということです。

今回、同社が行政処分を受けた理由は、一種業者が気にする分別管理の義務違反です。

上述したように、一種業者が分別管理というと、通常、顧客預り金に相当する額を信託することを意味します。

一方、二種業者が気にする分別管理は、ファンドにおいて、固有財産とファンド資金とを分別管理することを意味します。

同じ分別管理という単語を使っていますが、一種業者の分別管理と二種業者の分別管理はまったく意味が違います。

<クロスできるのか>
同社は、二種業務においても顧客預り金の管理が不適切だったわけですが、金融庁が適用した条文は、一種業務である第43条の2第2項です。

二種業務における行為に対し一種業務に適用される条文を適用することができるのか?という問題が残ります。

金融庁の公表を見ると、ここは金融庁でも議論があったらしく、二種業務と一種業務をクロスさせた理由が長々と説明されています。

金融庁の結論はクロスできるというもので、私も、当然、クロスできると考えています。

この考えを他の条文にも適用すると、例えば、金商法第2条第12項に規定する「金融商品仲介業者」は、一種業者(及び運用業者)のためにのみ、一定の金商業務ができるわけですが(金商法第2条第11項)、二種登録をしている一種業者は、金融商品仲介業者に、二種業務においても金融商品仲介業をさせることができると考えられますが、金商法第2条第11項の文言からも、この結論は妥当です。

余談ですが、金融商品仲介業者として登録を受けている個人としては税理士やFPがいますが、一種登録をしていない二種業者が、税理士やFPから顧客紹介を受け、顧客を紹介した税理士やFPに成功報酬を支払うことはできず、これをすると、税理士もFPが無登録営業になりなりそうですが(業務停止命令が頻発した助言業者と発行者の関係と構図が同じだから)、この結論も妥当です。


「これでわかった!金融商品取引法」の動画版をアップロードしています。

こちらからご覧になれます。

今回のテーマは「不動産信託受益の本質」です。ブログでには書いていないことを話していますので、ご参考にしてください。音声が出ますので、会社からご覧になる方はご注意ください。


私がオブザーバーをしている助言業者のコンプライアンス担当者(最近は運用業者が多い)の情報交換会「かすみの会」に参加希望のある方は、「かすみの会参加希望」という題名のメールを、必ず、お勤めの会社名、役職名、氏名を明記のうえ、お勤めの会社のメールアドレスからyoshinori_kawasaki@nifty.com宛にお送りください。

参加には、登録状況の確認など簡単な審査があります。審査結果に対するご質問には回答いたしません。

ほぼ毎月1回開催していて、次回は来週、5月14日(火)です。毎回テーマが決まっていて、次回は、「内部監査部門の独立性」です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード