内部監査規程の弊害


まったく使えない「内部監査規程」を後生大事に保存している金商業者が散見されます。

おそらく、どこかに「ひな形」があって、ひな形をベースに作成しているのではないかと疑われるくらい似通っている使えない内部監査規程の特徴は「リスクベースアプローチ」という非常に高度な手法を用い、規程に「リスク・マトリックス」を記載していることです。

これ、ダメです。

内部監査規程にではなく、「内部監査要領」「内部監査細則」なるものをわざわざ作って、やはり、リスク・マトリックスを記載している金商業者や、内部監査計画にリスク・マトリックスを記載している金商業者も、いずれもダメです。

理由は2つあり、一つはリスクベースアプローチが難しいということ、もう一つはリスク・マトリックスが内部監査の対象をゆがめてしまうからです。

実際、私に内部監査のサポートや内部管理態勢の検証を依頼したクライアントはご存じのとおり、私は、リスクベースアプローチは絶対に採用せず、金商業者の業務を網羅的に監査します。

<内部監査の規程のあり方>
内部監査規程(規程ではなく要領であっても細則であっても同じ)は、内部監査の実施要領を記載するだけで十分です。

具体的には、内部監査計画書の作成に関する手続、内部監査の実施方法、内部監査報告書の作成に関する手続、内部監査指摘事項に対する是正アクションに係る手続、以上一連の内部監査の終結の方法の5つを記載するのが、実務的です。

<内部監査の対象>
内部監査は2つの監査からなるようにすることが肝要です。一つは縦軸の監査、もう一つは横軸の監査です。

縦軸の監査とは、部門監査のことです。監査対象先の部門を決めて、部門全体の業務を監査する方法です。

横軸の監査とは、テーマを設定し、すべての部門をテーマに沿って監査する方法です。

規模の大きな金商業者の場合、縦軸の監査も横軸の監査も数回(あるいは数年)に分けて、実施せざるを得ませんが、規模が小さな金商業者の場合は、毎回、縦軸の監査と横軸の監査を実施します。

<監査対象の優先順位>
ただし、内部監査の対象を選択する際、優先順位を付けることは大切です。

ここは重要ですが、最優先で内部監査を実施しなければならない事項は、「社内規則に内部監査を実施する」と記載された事項です。

例えば、コンプライアンス規程に、「内部監査部は、この規程の遵守状況を監査する」とあれば、社内規程にそう書いてある以上、毎年、コンプライアンス規程の遵守状況の監査をしなければなりません。

社内規程の遵守のための方法を採用することは、平成26年改正金商法で義務付けられているところ、社内規則の遵守状況に内部監査を実施すると規定しているにもかかわらず、内部監査を実施していない状況(社内規則を遵守していない状況)は、笑えません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
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