応用の必要性


私がブログや動画やニュースレターで紹介している事例や考え方は、あくまで一般論です。

だから、金商業者の経営者やコンプライアンス担当者は、私が提供する情報を知っているだけではダメで、所属する金商業者の業務実態に応じて、金商法の知識を「応用」しなければなりません。

<金銭債権の証券化>
例えば、リース会社が、所有する金銭債権を証券化する仕組みに金商業者が関わるとします。

リース会社が金銭債権をSPCに譲渡し、SPCは投資家と匿名組合契約を締結して投資家から資金を調達したり、社債を発行して投資家に取得させたり、銀行から金銭の貸付けを受けたりして資金調達する場合を考えてみましょう。

コンプライアンス担当者は、「なんだ、簡単」で片づけてしまわないよう。

1 まず、このスキームにおいて、金商業者がアレンジャーとなると、金商業者の行為は「他の事業者の経営に関する相談に応じる業務」(金商法第35条第1項第12号)になるかもしれません。

2 リース会社がSPCに金銭債権を譲渡する際に金商業者が関与すると、「金銭債権の売買の媒介」(金商法第35条第1項第14号)になるかもしれません。

3 匿名組合契約の締結に関与すると「匿名組合契約の締結の媒介」(金商業等府令第68条第3号)になるかもしれません。

4 銀行の金銭貸付け業務に関与すると「銀行代理業」(銀行法第2条第15項)になるかもしれません。

5 さらに、SPCのバックオフィス業務をすれば「SPCの機関運営に関する事務を行う業務」(金商業等府令第68条第18号)、単体の銀行ではなく銀行団が貸付けを行う項に関与すれば「ローンパーティシペーションの締結の媒介」(金商業等府令第68条第4号)、SPCの金銭のマネジメント業務に関与すれば「キャッシュ・マネジメント業務」(金商法第35条第4項)に該当するかもしれません。

1から5に掲げる業務に該当する場合、二種業者や助言業者は、金商法第31条第1項の規定に基づき変更の届出が必要になるときがあり。(他に営む業務の追加)

一種業者や運用業者は、金商法第31条第1項の規定に基づく届出に加え、届出業務に関しては届出が、承認業務に関しては承認を得ることが必要になります。

<ビジネスを分解する>
「考え過ぎ」だと思いますか?

でも、この事例は、金融庁の検査で、「届出・承認の不備」が指摘され、5営業日の業務停止命令を受けた金商業者もある事例に基づき作った事例です。

最近の検査の傾向では、ここまで分析する検査官を見かけませんが、金商業者のコンプライアンス担当者は、ビジネスをトコトンまで分解し、法令違反がないことを確認するとともに、なぜ、法令違反がないと判断したのかという理由を記録しておく必要があります。

実際、私は、現役のコンプライアンス担当者だったときに、法令違反がないことを確認するために、ビジネスの分解をよくやりました。

ビジネスの分解は、スキームの組成の他にも、利益相反取引の発見のためにも必須です。

以上は、実際の検査に基づく一事例を一般化して説明したものです。繰り返しになりますが、ブログ、動画、ニュースレターで私が語っていることは、一般論です。

コンプライアンス担当者の方は、一般論を各社の実務にどう応用するかを考える必要があります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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