コンプライアンス業務の外部委託


古くからの友人である弁護士から、投資助言業者のコンプライアンスの外部委託について相談を受けました。

<コンプライアンスの外部委託>
助言業者と二種業者のコンプライアンス業務は、次のパブリックコメントと金融庁の回答から、外部委託することができると考えられています。

長いですが、私の考えが入りこまないように、原文を引用します。

コメント
改正案では、投資顧問業者の登録要件として人的構成要件が追加されたことを踏まえて、その体制審査にあたっては、コンプライアンス担当者が確保されていることが明示されている。しかしながら、コンプライアンス担当者については、その業者の業容や規模によっては専担者を配置することが難しい場合もあり、また、コンプライアンス担当者が他の業務を兼務するよりはコンプライアンス業務を外部委託して行うこととした方が、よりコンプライアンス態勢の充実・強化が可能となる場合もある。そこで、投資顧問業者と同様の登録要件が課せられているプロ向け投資運用業と同等にコンプライアンス業務を外部委託することが可能であることを明示する規定を置くとともに、この①ホを以下のように改めるべきであると考える。

なお、第二種金融商品取引業の体制審査にあたっても、上記と同様の考え方に基づき、コンプライアンス業務を外部委託することが可能であることを明示する規定を置くべきであると考える。

回答
コンプライアンス業務を外部委託することの適否については、個別事例ごとに実態に即して判断されるべきものであり一律に規定することは適当でないと考えられますが、当局や当該業者への連絡体制などが構築できる場合等には、外部委託が認められる場合もあるものと考えられます。

<委託業務の範囲>
金融庁のこのパブリックコメント回答をもとに、当時(3年前)、私は(試しに)、コンプライアンス業務の外部委託を受けました。なお、私はOKでしたが(おそらく、20年以上のコンプライアンス経験が買われた)、行政書士にコンプライアンス業務を委託しようとしても、金商法の知識・経験があると認められないことから、財務局にNOと言われますので、外部委託先は金商法の実務に詳しい弁護士になります。もっとも、金商法の実務詳しい弁護士となると、私は3人しか知りません。

では、外部委託できる業務範囲はどこまでか?

経験に基づくと、正解は「すべて」です。正確にいうと逆で、すべてを外部委託しなければなりません。

ですから、外部委託を受ける専門家は、助言業者のコンプライアンス担当者であるわけで、大変な義務と責任を負います。

委託元(金商業者)が委託先(外部の専門家)を管理監督するのではなく(理論上、確かにできない)、委託先が委託元を管理監督しなければなりません。

報酬は必然的に高額になります。

<外部委託契約>
ですから、コンプライアンス業務の外部委託の契約は、次の文言を入れることが必要です。

1 委託元(金商業者)は、委託先(外部の専門家)の指示に必ず従う

2 委託先は、委託元のコンプライアンス業務について善管注意義務を負う

3 一方が違反した場合は、相手方は、即、契約を解除することができる

私も、今は、コンプライアンス業務の外部委託を受けていませんが、委託先は委託元のコンプライアンス担当者ですから、委託していた当時は毎日多忙を極めました。

助言登録申請や二種登録申請をする際、コンプライアンス担当者不足が理由で登録要件を満たさない場合、コンプライアンス業務の外部委託も一つの選択肢になりますが、外部委託契約を締結すると、委託元と委託先の利害は必ずしも一致しないため、両者の間に緊張が生まれることは記憶しておくべきです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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