一人でできる金商法


金商業者のコンプライアンス担当者にとって一番大変なことは何か?というアンケートをとったら、「金融庁に提出する書類の作成」という回答が一番になるんじゃないかというくらい、書類の作成が苦手な金商業者が多いです。

<届出書>
一番、簡単な書類なのに、なぜか外部委託をする金商業者が多い書類が、「届出書」の作成です。

届出書は大きく分けると3つに分かれます。

一つ目は、「登録申請書」の変更の届出書です。これは、一番、簡単。登録申請書に記載した事項に変更があったときには、届出書と変更のあった登録申請書の頁と添付書類を、変更のあった日から2週間以内に作成して、金融庁に提出するだけです。

登録申請書の変更の届出書の中で、一番、大変なのは役員と政令で定める使用人の変更ですが(人的構成に係る書面の提出が求められるため)、これでさえ、慣れれば、1時間もかかりません。

二つ目は、業務方法書の変更の届出書です。これも、簡単。業務方法書に記載している事項に変更があったときには、届出書と新旧対照表と業務方法書の全文を、変更のあったときから遅滞なく作成して、金融庁に提出するだけです。

不慣れでも、2時間以内にできます。

三つ目は、イベントがあったときに提出する届出書です。これは、種類が多くて大変そうですが、日常的に生じるのは、関係会社の増減くらいで、合併や事業の休止や廃止など、めったに発生しないイベントでも、すべて書類のひな型は金融庁のサイトで公表されているので、イベントにあった書類を作成するだけです。

<事業報告書>
年度末から3か月以内に提出する事業報告書の作成が苦手なのか、面倒なのかわかりませんが、外部委託する金商業者も多いです。

事業報告書を見ればわかりますが、記載すべき事項に関する情報を持っているのは、金商業者本人だけなので、事業報告書は、作成や提出の外部委託をする意味がまったくない書類です。

金商業者は、事業報告書くらいは、自分で作るようにしましょう。

<難しい書類>
難しい書類があるとすれば、「法令違反」が発生したときに作成する書類です。法令違反が発生したときに作成する書類は大きく三つ分けることができます。

一つ目は、「事故届」です。法令違反を自ら発見したときには金融庁に報告しなければなりませんが、これを「事故届」といいます。

事故届の提出には、特殊な手続きが必要になるので、書類の作成が難しいというよりも、正しい手続きを踏むことが難しかったりします。

もっとも、法令違反を発見したときに金融庁に電話をすれば、提出すべき書類についても懇切丁寧に指導があるので、時間はかかりますが、金商業者が作成できない書類ではありません。

二つ目は、「業務改善報告書」です。法令違反を当局が発見したときに金融庁に提出する報告書です。

これは、はっきりいって難しい。金融庁の指導を仰いでも、難しいです。業務改善報告書の作成になってくると、専門家のサポートが必要です。

三つ目は、「報告徴取命令」に対して提出する報告書です。これは、難しいですし、半分以上は、金融庁の指導を仰げません。だから、報告徴取命令を受け取ったときには、すぐに、専門家に相談することが必要です。

以上見てきたように、業務改善報告書と報告徴取命令に係る報告書の作成を除き、金融庁に提出する書類の作成は、簡単です。

外部委託にコストをかけるのではなく、金商業者が自らが作成して提出するようにしましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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