1億円未満の公募債の発行


公募債の発行に関する相談を受けたので、公募債発行の注意事項についてまとめます。

<公募債>
公募債とは、法律上の用語ではありませんが、一般的に、(金商法の意味の)募集又は売出しで発行される社債のことです。

基本的に、50人以上に取得勧誘が行われる社債だということです。

<金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律>
貸金業者から「社債で貸付金に充てる資金調達をしたい」という相談を受けることがありますが、原則として、貸金業者が社債で調達した資金を貸し付けに回すことはできません。

この法律は、社債権者の保護が目的ですので、社債権者の保護が図られている貸金業者、具体的には、資本金が10億円以上で、審査経験3年以上の者が2人以上審査をしている貸金業者のうち、「金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律」に基づき登録を受けた貸金業者のみ、貸付金に回す目的をもって社債で資金調達をすることが可能です。

<会社法>
社債の発行は、会社法に規定されて手続に従います。

実務上、会社法で重要な規定は「社債管理者」の設置義務です。各社債の金額が1億円以上の場合又は発行総額を(最低)額面で割った数字が50未満の場合を除き、発行者は、社債管理者を設置しなければなりません。

このため、実務的には、発行総額が1億円程度の場合、額面金額を上げて、発行総額を額面で割った数字が49以下になるようにします。

<金商法>
発行(売出)総額が、1000万円以下の場合、発行者(非開示会社)が行うべき当局に対する手続はありません。

1000万円超1億円未満の場合、発行者は勧誘を開始する前日までに当局に対して「有価証券通知書」を提出しなければなりません。

なお、有価証券通知書は、「有価証券届出書」と異なり、投資家に対して情報を提供する目的である「開示書類」ではありません。したがって、有価証券届出書のような効力発生日という概念はありません。

1億円以上の場合、発行者は勧誘を開始するまでに当局に対して「有価証券届出書」を提出しなければなりません。

有価証券届出書の効力発生日は、原則として、有価証券届出書が受理されてから15日を経過した日です。

社債の募集を行おうとする発行者は、有価証券届出書が受理されれば募集(取得勧誘)を開始することができますが、効力発生日以降でなければ、取得させることはできません。有価証券届出書は開示書類であり、投資家に情報を浸透させるためのものなので、効力発生日という、投資家の熟慮期間を設けているからです。

金商法上、実務的に重要な規定は「1年通算規定」です。

発行総額が1億円未満であれば、募集であっても、有価証券届出書の提出は不要なわけですが、発行日前1年以内に同一の種類の有価証券の募集をしている場合、通算して1億円以上となると、有価証券届出書の提出が必要になります。

言い換えると、有価証券届出書の提出を避けるのであれば、1年間に発行する公募債の発行総額を1億円未満にしなければならないということです。

なお、この規定は、公募債に係る規定であって、私募債に係る6か月通算の規定とは何ら関係がありません。紛らわしいので、注意が必要です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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