投資運用業に関する特則1


運用業務と一口にいっても、投資法人と委託契約を締結して行う運用業務、投資一任契約を締結して行う運用業務、投資信託の財産の運用業務、自己運用として行う運用業務と、種類は豊富です。

<権利者>
運用業者は、「権利者」に対して忠実義務を負っています。

では、権利者とは誰のことか。

投資法人と委託契約を締結して行う運用業務において、権利者とは、運用業者の契約の相手方である投資法人のことです。投資法人は投資者を社員とする社団だからです。

投資一任契約を締結して行う運用業務において、権利者とは、契約の相手方です。投資一任契約の相手方がSPCで、運用業者がSPCに出資した投資者の金銭を運用している場合も、運用業者が忠実義務を負う権利者は投資者ではなくSPCです。

投資信託の財産の運用業務において、権利者とは、受益証券に表示される権利を有すものです。投資信託契約の相手方が信託銀行であっても、運用業者が忠実義務を負う権利者は信託銀行ではなく権利所有者です。

自己運用の場合、運用業者が忠実義務を負う権利者は出資者です。

運用業者の善管注意義務の相手方も、同じです。

<忠実義務違反>
過去に忠実義務違反を問われたケースを見ておきましょう。

新規公開株式の恣意的な配分
これは、(現在の)運用業者が、運用資産の運用における新株への投資にあたって、配分方針を決めていたにもかかわらず、配分方針を無視するような公平性を欠く配分を繰り返し行ったというものです。

金融庁の公表によると、配分方針は、運用資産の運用規模に応じた配分をするというものだったところ、パフォーマンスの寄与度が大きいという理由で資産規模の小さな運用資産に集中的に配分したり、パフォーマンスが相対的に低下した運用資産の改善策として集中的に配分を行ったりしたということです。

配分方針が異なっていたら、行政処分の対象にならなかったのかどうかについては、当時の事情が分かりませんので、わかりません。

利益相反状況における資産運用会社の忠実義務違反
これは、運行業者が、投資法人の資産を取得するに際し、運用業者の利害関係者である売主が負担するとしていた看板設置費用を投資法人の負担する決定を異議なく承認したというものです。

金融庁の公表によると、同社は、利害関係者である売主の利益が優先され、投資主の利益を損なうことを認識しながら、建物賃借人に対し、看板設置費用を投資法人が負担する資本的支出として処理することを求める申請書を、同社宛てに提出することを指示し、同社の代表取締役と管理本部長は、提出された申請書を、何らの異議なく承認したということです。

典型的な忠実義務違反は、運用業者が権利者の利益を犠牲にして自己の利益を図る行為ですが、以前にもブログに書いた通り、権利者の利益よりも、利害関係者の利益を優先する行為も、忠実義務違反です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード