投資運用業に関する特則2


金商法は、自己取引、運用財産相互間取引、スキャルピング、損失補てんなど、忠実義務違反や善管注意義務違反となり得る取引を禁止しています。

このうち、自己取引、スキャルピング、損失補てんは、刑事罰をもって禁止されています。

<自己取引>
運用業者が、自己が所有する有価証券を運用財産として取得させり、逆に、運用財産である有価証券を自己が取引の相手方となって取得したりする行為を禁止しています。利益相反取引による弊害を防止するためです。

「自己の利益を図る目的をもって」と書いていないので、目的の如何を問いません。

例外があり、一つ目は、「取次ぎ」です。取次ぎとは、「自己の名義」で「他人の計算」で行われる取引です。つまり、確かに形式上は自己取引なんだけれども、実質、他人の取引は例外だということです。

例外の二つ目は、投資者保護と取引の公正性の両方が担保されている取引です。投資者保護の観点から、運用業者は、個別の取引毎にすべての権利者(投資法人は投資主)に取引説明を行い、すべての権利者の同意を得ることが必要です。

また、取引の公正性の観点から、取引が証券取引所における売買などであることが必要です。取引価格の公正性が担保されると考えられるからですので、価格が公表されていない不動産信託受益権の取引についても、合理的な方法(不動産鑑定士の評価に基づき価格を算出する方法)により価格が算出されているならば、公正な取引の観点からの要求を満たします。

「運用業者がTKの営業者であるSPCと投資一任契約を締結する場合、権利者とは、SPCであることを確認したい」という趣旨のパブリックコメントがあります。これに対し、金融庁が「匿名組合員が実質的に権利者に該当する場合がある」と回答し、事例を上げて、説明しているので、注意が必要です。

例外の三つ目は、所管金融庁長官等の承認を受けた取引です。

<運用財産相互間取引>
運用財産相互間取引も、利益相反取引による弊害を防止する観点から禁止されています。また、目的の如何を問いません。

例外があり、やはり、投資者保護と取引の公正性の両方が担保されている取引です。

所管金融庁長官等の承認を受けた取引の他、権利者の同意を必要とするか否かで、次の2つの例外に分かれます。

権利者の同意が不要である場合、投資者保護の観点からは、取引が、運用の終結のために行う取引、解約金や払戻金の支払に応ずるために行う取引、契約違反となる資産保有を避けるために行う取引、運用財産双方にとって必要かつ合理的と認められる場合における取引のいずれかである必要があります。必要かつ合理的と認められる場合は、監督指針に例示があります。

また、取引の公正性の観点からは、取引が、上場有価証券の取引等、公正な価格での取引(対象有価証券売買取引等)であることが、担保されている取引であることが必要です。このため、

不動産信託受益権の取引は、対象有価証券売買取引等に該当しませんから、運用財産相互間取引においては、常に、権利者の同意が必要である場合に該当します。

権利者の同意が必要である場合、投資者保護の観点から、運用業者は、個別の取引毎に双方の運用財産のすべての権利者(投資法人は投資主)に取引説明を行い、すべての権利者の同意を得ることが必要です。

また、取引の公正性の観点から、取引が証券取引所における売買などであることが必要です。取引価格の公正性が担保されると考えられるからですので、価格が公表されていない不動産信託受益権の取引についても、合理的な方法(不動産鑑定士の評価に基づき価格を算出する方法)により価格が算出されているならば、公正な取引の観点からの要求を満たします。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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