投資運用業に関する特則5


運用権限の委任(外部委託)は、限定的に認められています。

<運用業者の外部委託>
権利者が、運用業者の力量を信じて運用業者に運用を委託したのに、運用を受託した運用業者が運用権限を他の運用業者に委託してしまっては、権利者の期待に応えられません。(受託者の自己執行義務)

だから、運用権限の委託が認められると言っても、当然、限度があります。

具体的には、投資一任契約などの法律行為において次の事項が定められていないと、運用権限の委託はできません。

1 運用権限の委託をする旨及び委託先の商号

2 委託の概要

3 委託先に対する報酬を運用財産から支払う場合には報酬の額

私のクライアント見ている限り、運用権限の委託が問題になるケースとして、外資系運用業者が、親会社である外国運用業者に、運用権限を委託するケースがあります。

外国運用業者のうち、金商法第29条の登録を受けた者以外の外国運用業者は、委託先として適格です。

ただし、平成23年改正金商法で、投資助言・代理業のみの登録を受けている外国運用業者は、適格になり、「外国投資運用業者のうち投資助言・代理業のみについて金商法第29条の登録を受けた者は・・・投資運用業者が運用権限を委託することができる者として扱われる」(平成24年2月10日付金融庁パブリックコメント回答63頁170)ことになりました。

条文に沿って書くとわかりにくいですが、つまり、一種登録か二種登録をしている外国運用業者は不適格ということです。

<自己運用を行うSPCの外部委託>
証券化スキームにおいて、SPCが自己運用を行う場合があります。SPCであっても、自己運用を行うのであれば、当然のことながら、運用業務を行うことになるので、特例業務届出者や10名未満適格機関投資家限定ファンド運用者でない限り、金商法第29条の登録を受ける必要があります。

ただし、自己運用を行う者が、運用業者と投資一任契約を締結して、運用権限の全部を委託する場合には、一定の要件を満たした場合に限り、自己運用が金商業から除かれることから(定義府令第16条第10号)、SPCが運用業者に運用権限を全部委託するときには、一定の場合に限り、SPCが金商業者として登録を受ける必要がありません。

念のためですが、このような運用権限全部委託型SPCは運用業務を行っているわけではないため、現在、シリーズでお話している「投資運用業に関する特則」は適用されません。

運用権限全部委託型SPCについて、ここで触れた理由は、運用権限の外部委託の一類型であることと、後述する分別管理規定に影響してくることからです。

<自己運用を行うSPCの分別管理>
運用業者の分別管理について、まず、原理原則からお話すると、運用業者のうち自己運用を行う者は、運用財産と固有財産及び他の運用財産とを分別管理しなければなりません。

では、自己運用を行っているんだけれども、金商業から除かれるために、投資運用業に関する特則が適用されない運用権限全部委託型SPCの分別管理はどうなるか。

結論から言うと、SPCから運用権限の全部委託を受けた運用業者が、SPCが投資運用業に関する特則に定める方法で分別管理をしていることを監督する義務を負います。(定義府令第16条第10号ニ)

だから、分別管理規定は、一見すると自己運用を行わない運用業者には関係のない規定のように見えますが、運用権限全部委託型SPCから運用権限の全部委託を受けている運用業者にとっても、重要な規定です。

分別管理の方法は、金銭と金銭以外(有価証券等)に分かれます。

金銭は、他の金商業者(有価証券等管理業務を行う者に限る。)に預託する方法、銀行等に預貯金する方法(運用財産であることがわかる名義に限る。)、信託銀行に金銭信託する方法(運用財産であることがわかる名義に限る。)のいずれかの方法により、分別管理されなければなりません。

金銭以外は、混蔵保管(例えば、国債の大券で運用財産と固有財産を混蔵保管する場合)の場合は帳簿管理ですが、混蔵保管でなければ、運用財産に係る有価証券等と固有財産に係る有価証券等の保管場所を明確に区分し、さらに、運用財産に係る有価証券等は、どの運用財産にかかる有価証券等であるかが直ちにわかる状態で保管される必要があります。

第三者に保管させる場合も、第三者において、同じ保管方法が採用される必要があります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード