投資運用業に関する特則6


「投資運用業に関する特則」は、今日で最後です。

<金銭又は有価証券の預託の受入れの禁止>
運用業務に関して、顧客から金銭や有価証券の預託を受けることが禁止されています。

有価証券等管理業務として預託を受ける場合は除かれますが、有価証券等管理業務は一種業務の一つなので、一種業務と運用業務を行っている金商業者が前提です。

ここで、運用業務とは、投資法人と委託契約を締結して行う運用業務と一任契約を締結して行う運用業務に限ります。自己運用は、顧客から拠出された金銭の運用を行うため、当然、ここでいう運用業務から外れます。

自ら預託を受ける場合のみならず、運用業者の役職員や運用業者の親子法人に預託させることも禁止です。ただし、親子法人が、有価証券等管理業務を行う金商業者であったり、銀行であったりする場合は除かれます。

この規定は、投資一任契約の相手方が特定投資家である場合には適用されません。ただし、特定投資家が相手方であっても、分別管理体制がない場合には、適用されます。

実務上問題になる場面はなさそうですが、例外が多いので、適用されるかどうかを検討する際には、関連条文の精読が必要です。

「不動産AMが行う単なる通帳管理は預託ではないことを明確にして欲しい」という趣旨のパブリックコメントがありますが、金融庁は「預託禁止規定に抵触する可能性がある」と回答しています。

<金銭又は有価証券の貸付けの禁止>
運用業務に関して、顧客に金銭や有価証券を貸し付けたり、金銭や有価証券の貸付けの媒介を行ったりすることは禁止されています。レバレッジがかかり、顧客に過大なリスクを負わせることになりかねないからです。

ここも、運用業務とは、投資法人と委託契約を締結して行う運用業務と一任契約を締結して行う運用業務に限ります。

また、この規定も、投資一任契約の相手方が特定投資家である場合には適用されません。

「不動産AMがSPCによる借入契約の契約交渉を行う行為は適用除外として欲しい」という趣旨のパブリックコメントがありますが、金融庁は「貸付禁止規定の対象となり得る」と回答しています。

<運用報告書>
運用業者は、原則として、6か月に1回以上の頻度で運用報告書を作成して、知れている権利者に交付する義務があります。権利者が厚生年金基金等の場合は、3か月に1回以上です。

また、自己運用に関しては、権利者の数が500名以上の場合、運用業者は、権利者に交付した運用報告書を金融庁(財務局管轄の場合は財務局)に届け出る義務も負います。ただし、運用報告書に記載すべき事項が記載されている有価証券報告書の提出義務がある場合を除きます。

この規定も、投資一任契約の相手方が特定投資家の場合には、適用されません。

なお、運用報告書の写しは、10年間保存が義務付けられた法定帳簿です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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