勧誘


クライアントから「何をすると勧誘になるんですか」「金商業者の登録を受けないでどこまでできますか」「勧誘の定義は何ですか」という「勧誘」に関する質問を受けることがあります。

私が現役のコンプライアンス部長だったときに受けた金融庁(10年以上前は金融庁と証券取引等監視委員会の合同検査が実施されていた)の検査で、検査官から「こんにちはと言った瞬間に勧誘だ!」と言われたことがあり、実際、電話で「もしもしと言った」ことが指摘事項となったことがあります。(49人勧誘の計算にあたって)

現在は、ここまで極端な話をする検査官はいないでしょうけれど、確かに、当時の検査官が言っていたように、「利益を上げようとして顧客と口をきいたら勧誘だ」という考え方も、あながち、間違ってはいない気がします。

<既発有価証券の取引の場合>
金商業の定義を見ると、「有価証券の売買」(取引)が金商業であって、有価証券の売買に至る経緯(取引前)や、有価証券の売買の結果(取引後)は、金商業ではありませんが、行為規制は、広告規制や契約締結前交付書面の交付義務という取引前規制、偽計の禁止などの取引規制、金銭の受け渡しや取引残高報告書の交付義務に関する取引後規制から成り立っています。

したがって、金商業者でなければ、取引はもちろん、取引前行為も取引後行為もできないと考えられます。

「金商法の規制対象行為は、金商業であるから、有価証券の売買の媒介に関して言えば、媒介契約(取引)は金商業であって登録業者のみに許される行為だが、勧誘(取引前行為)は登録業者でなくてもできる」という考え方も、一方であります。

実際、不動産信託受益権の売買の媒介において、勧誘行為は、登録業者以外の者が行い、登録業者の登場は契約(媒介契約の締結)のときだけ、という事例があると聞いています。

ただ、これを許してしまうと、広告規制が形式だけになってしまうため(形式も整えていない場合は論外)、金商法の目的規定である「投資者の保護」が図られないため、やはり、取引前行為ができるのは、金商業者のみと考えるべきです。

したがって、既発有価証券の取引の場合、「勧誘とは何か」という議論は無意味で、「取引に貢献するすべての行為は取引前行為として規制され、金商業者として登録を受けていない者はすることはできない」ことになります。

<新発有価証券の取引の場合>
新発有価証券の取引の場合は、勧誘行為が金商業(金商業者にとっての取引)であって、勧誘行為の結果(金商業者ではなく当事者にとっての取引)は金商業ではありませんので、「勧誘とは何か」を論じる意味があります。

例えば、「私募の取扱い」の場合、「私募」を行うのは、発行者で、私募の結果、有価証券を取得するのは投資者であるから、発行者と投資者にとっては「取得」という取引が重要ですが、取得は金商業ではありませんので、当然、金商法の規制対象ではありません。

金商法の規制対象である私募の取扱いとは、発行者のために行う取得勧誘と考えられるため、取得勧誘を行う者は、金商業者として登録を受けなければなりません。

「じゃあ、勧誘って何?」

新発有価証券の場合の「勧誘」と、既発有価証券の取引の場合の「取引前行為」を分ける積極的な理由がないことから、既発有価証券の取引の場合と同様に、新発有価証券の取引の場合の勧誘も、「取引に貢献するすべての行為」と考えられます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード