昨年の振り返り(ニュースレター)


現在、ブログの更新は休止中で、代わりにメールでニュースレターを配信しています。ブログ同様無料で配信していますが、ニュースレターの方が、読者に直接届くという実感があるからです。

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なお、ニュースレターの会員数が把握できないほど多くなってしまい、完全には管理できていません、。もし、「ニュースレター希望」メールを要件を満たして送ったにもかかわらず、1か月以上ニュースレターが届いていない方は、大変お手数ですが、あらためてご連絡ください。

今回は、昨日配信したニュースレターの内容をサンプルとして掲載します。



あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

金商業者のコンプライアンスに関連して、昨年、最も印象に残った件は、12月のドイツ証券に対する行政処分でした。証券取引等監視委員会は、ドイツ証券の検査の結果、ドイツ証券における法人関係情報の管理に不備が発見されたとして、金融庁に行政処分勧告を行い、金融庁が行政処分を行ったものです。法人関係情報の管理不備は、証取法時代、証券会社に対する指摘事項のNO1という印象を持っていますが、ここのところ行政処分にいたる事件がなく、法人関係情報の管理不備で行政処分が出たのは、私の知る限り、3年7か月ぶりです。

http://www.fsa.go.jp/news/27/syouken/20151215-1.html

法人関係情報に係る過去の事件で、最も興味深い事件は平成16年5月28日に行政処分を受けたUBS証券の事件です。

http://www.fsa.go.jp/news/newsj/15/syouken/f-20040528-1.html

証券取引等監視委員会のこのときの指摘に関しては、以下の点をすべての金商業者のコンプライアンスのご担当者が、必ず、覚えておく必要があります。

「UBS証券は、不公正取引の未然防止を図る観点から、コンプライアンス部に法人関係情報に係る社内研修を実施させるとともに、法人関係情報を取得した場合には、社内規程に基づき厳格に法人関係情報を管理することとしており、アナリスト・レポートについても、法人関係情報の記載がないかをチェックするための審査体制を株式調査部に設け情報を管理している」

なぜ、すべての金商業者のコンプライアンスのご担当者が、この指摘を記憶しなければならいのでしょうか。

よく読むとわかりますが、UBS証券は、法人関係情報の管理について何もしていなかったのではなく、社内規程を設け、社内研修も行い、審査体制まで設けて管理していたにもかかわらず、行政処分を受けています。一般化すると、社内規則を設け、社内研修を行い、実行していたにもかかわらず、行政処分を受けたわけです。つまり、証券取引等監視委員会の検査は「形式」ではなく、「実質」を見るということで、当たり前のことですが、社内規則を設け、役職員に周知し、遵守しているだけでは不十分という事実は、あらためて確認しておきたい点です。

昨年春までの金商業者に対する検査を私が見ている限り、金商法施行後、証券取引等監視委員会の検査が「形式」に偏る傾向があると感じていましたが、(昨年7月の金融庁の人事異動の結果であると私はとらえているのですが)昨年末のドイツ証券に対する検査で、再び、証券取引等監視委員会が「実質」に傾斜する当たり前の方向に舵を切りなおした感があります。

ドイツ証券事件は、証券取引等監視委員会の検査結果が公表されたときに解説しましたが、重要な点は、「役職員が取得した上場会社の情報が法人関係情報であるかどうかについて、コンプライアンス担当者が検討していない事例があった」という点で、法人関係情報該当性の判断はコンプライアンス担当者がすべきであって、現場におろしてはいけないということです。

この指摘を受けた以上、ドイツ証券が最初にやるべきことはおそらく唯一つ、コンプライアンス担当者の人数を増やすことです。法人関係情報はインサイダー情報と異なり、職務を通じて知ったかどうかを問わない中、役職員が取得した上場会社のすべての情報をコンプライアンス担当者が審査する必要があるからです。

昨年末には、ヴァンネット(ワインファンド運用の二種業者)の登録が取り消されるという事件もありました。読むと、「当然でしょう」ということになりますが、注意が必要な点は、同社は証券取引等監視委員会の検査の結果として行政処分を受けたのではなく(同社には検査が入っていたが)、金融庁(関東財務局)から受けた報告徴収命令を契機に登録取消し処分を受けている点です。昨年6月、二種業協会に加入していなかった二種業者に対して、金融庁及び各財務局から報告徴収命令が発信されたとき、報告徴収命令を「アンケート」と呼ぶ金商業者が散見されたため、「報告徴収命令は金融庁の伝家の宝刀」とお伝えしましたが、ヴァンネットの件に見るように、報告徴収命令を軽く考えることは絶対にできません。

http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/pagekthp032000323.html

以上、昨年印象に残った事件を概観しましたが、2016年も、金融庁(監督部局)と証券取引等監視委員会(検査部局)が手を抜くことは考えられませんので、昨年何度も繰り返しました通り、必ず、内部管理態勢の検証作業を実施することをお勧めします。内部管理態勢の検証方法、また、内部管理態勢の検証作業で最も重要なことは「取引」「助言」の検証であることについては、昨年お話しした通りですので、あらためてご確認ください。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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