平成21年改正金融商品取引法(2)


平成21年改正金商法で歴史的な転換を迎えるのが「売出し」の定義の改正です。前回お話しましたように、売出しは、「既発証券」を「均一の条件」で「50人以上」を対象に行う売付け勧誘等でしたが、改正で「均一の条件」が外されました。この結果、金商法のさまざまな条文に多大な影響が出てしまいました。

<改正金商法の売付け勧誘等の整理>
中身に入る前に、改正金商法の売付け勧誘等は、どのような分類になるかを整理しておきます。まだそれぞれの意味がわからなくても、このような分類になるんだ、ということは完璧に記憶するようにしてください。ここがぶれると、改正金商法は「わかったつもり」で終わってしまいます。

①売出し(原則、法定開示が必要)
①-1 法定開示が必要な売出し
①-2 法定開示が不要な売出し
①-2-1 (法定開示が不要でも)外国証券情報の提供又は公表が必要な売出し
①-2-2 (法定家事が不要で)外国証券情報の提供又は公表も不要な売出し

②私売出し(法定開示不要)
②-1 適格機関投資家私売出し
②-2 特定投資家私売出し
②-3 少人数私売出し

③売出しに該当しない売付け勧誘等

以上、大きく分けると3通り、細かく分けると7通りになります。本当は図にするとわかりやすいのですが、ブログの関係上、図解できませんでしたので、以上をもとに、ご自身で図にすると、わかりやすく、記憶しやすく、人に説明しやすくなると思います。

<均一の条件の削除>
改正金商法で売出しは「不特定多数の投資家に行う同種の既発証券の売付け勧誘等」と定義され、現行の定義にある「均一の条件」が外れました。その代わり「多数」の計算方法に、「過去1ヶ月間の50名通算」が追加されました。期間を決めておかないと、有価証券を1名に販売したところ、実は10年前に49人に販売していたので、売出しだった!ということが起きてしまうからです。

なお、過去1ヶ月の人数計算は延べ人数を計算することになり、同一の投資家に複数回売付け勧誘等を行った場合、1名とは計算せず、複数回として計算する必要があります。(企業内容等開示ガイドライン2-9、平成21年12月22日付パブコメ回答8、平成21年12月28日付パブコメ回答164参照)これは、現行の「企業内容等の開示に関する留意事項」(通常、「企業内容等開示ガイドライン」と呼ばれます)の2-2を踏襲したものです。

過去1ヶ月通算の対象となるのは、同一発行者が発行する条件の同一の有価証券を指し(定義府令10条の2・2項)、社債の場合、償還期限、利率、通貨が同一であれば、通算の対象となります。他社株転換社債の場合には、社債の場合に加え、対象株券が同一であれば、通算の対象になります。なお、条文上(定義府令10条の2・1項5号)、他社株転換社債の保有者に株券への転換の行使権がある場合の他社株転換社債のみを規定されているように読めますが、発行条件に従って、強制的に株券に転換される場合も含むという解釈が初めて金融庁から明示されました。(平成21年12月28日付パブコメ回答13参照)売出しとは無関係ですが、平成21年12月28日付パブコメ回答13は、内部者取引となる有価証券を規定する令27条の4・6号の解釈に多大な影響を与えます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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