無登録業者に紹介料を支払って良いのか


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今回は、2月12日に配信したニュースレターの内容をサンプルとして掲載します。



今月と来月、かなりの数の社内研修の講師を依頼されて、社内研修は金商業者にとって非常に重要ですので引き受けています。今回は、偶然、すべてが不動産信託受益権販売業者(二種業者)です。不動産信託受益権販売業者が、内部管理態勢の向上に真剣になってきた証拠だと私は見ています。

不動産信託受益権販売業者の社内研修で講師を行ったり、二種業者向けのセミナーで講師をしたりすると、必ず(100%)聞かれる質問が、次の質問です。

「二種無登録の宅建業者から不動産信託受益権売買の買主を紹介された場合、二種無登録業者に紹介料を支払っても良いのか?」

結論に行く前に、考え方を整理しておきましょう。

宅建業者は、二種業者であっても、宅建業法に引きずられて、信託受益権の所有者を「売主」、取得者を「買主」と呼びますが、正確ではないことは、私がブログでもニュースレターでも、何度も繰り返している通りです。

不動産信託受益権の所有者がオリジネーターの場合、通常、金商法では、信託受益権の所有者は「発行者」であって、売主ではありません。なぜか。売主とは他人のものを取得して売却するものを意味する用語だからです。転売する者を売主と言います。これに対し、オリジネーターは、オリジネーターというくらいですから、他人のものを取得したのではなく、自ら信託受益権を生み出した者です。自ら有価証券を生み出した者のことを、金商法では「発行者」と呼んで売主と区別し、異なる規制をかけています。

「発行者と売主は似ているのに、どうして異なる規制をかけるの?」

金商法の目的が「有価証券の公正な価格形成」にあるからです。有価証券の公正な価格とは、市場参加者が有するすべての情報が反映された価格のことです。ところが、発行者が市場に参加し、有価証券を譲渡しようとするとき、この理屈が通らなくなるおそれがあります。なぜなら、発行者だからこそ知っている情報を、市場に流さない可能性が高いと考えられるからです。だから、金商法は、発行者に「開示規制」という売主には適用のない特別な規制を課し、情報を強制的に公開させる仕組みを作っています。

「募集の場合はそうだが、私募のときには、開示規制は適用されないのでは?」

この理解は間違えていて、私募であっても開示規制は適用されます。ただ、有価証券届出書の提出が免除されているだけです。私募の場合、なぜ、有価証券届出書の提出が免除されているかというと、私募は、発行者と取得者の間に密接な関係があると想定しているからです。例えば、親族関係や取引関係です。取得者は発行者に関する情報と発行者が発行する有価証券に関する情報を良く知っているから、有価証券届出書の提出を免除しても問題ないという判断です。

「不動産信託受益権の取引には、開示規制は適用されないのでは?」

これは正しいです。不動産信託受益権は募集であっても私募であっても、開示規制は適用されません。(契約締結前交付書面の当局提出義務はあるが、監督上の問題であって開示規制ではない)なぜ、不動産信託受益権の取引には開示規制が適用されないのか。理由は、いくつか考えられ、流動性が乏しいために、開示規制が必ずしも公正な価格形成を担保しないから、複数の投資家が同じ不動産信託受益権を取得することは考えにくいから、不動産信託受益権のように金額の大きい有価証券の場合は、募集であっても私募や売買同様、発行者と取得者の間に情報格差が生じることは考えにくいからなどです。

「じゃあ、不動産信託受益権の取引の場合、発行者と売主を区別する実益はないじゃないか」というと、有価証券の引受けの問題とか、契約締結前交付書面の交付の問題などが残るため、実益はあります。

発行者が不動産信託受益権を譲渡しようとする行為は、募集又は私募であり、募集又は私募の定義は、「有価証券の取得勧誘」です。ここでわかることは、金商法は、発行者の行為に関しては、「取引規制」ではなく、「勧誘規制」を課しているということです。

ここは、金商法を考えるうえで、非常に重要です。私は、研修やセミナーで、この事実をわかりやすく「金商法は勧誘行為にのみ興味があり、実際の取引にはまったく興味がない」という言い方をしています。極端ではありますが、行為規制に限って言えば事実です。したがって、不動産信託受益権のオリジネーターが不動産信託受益権を譲渡しようとするとき、二種無登録の宅建業者が取得者(宅建業法上は買主)を発行者又は私募の取扱いを行おうとする二種業者に紹介して、手数料を受領しようとする行為は、特殊な事情がない限り、無登録営業となり、刑事罰の対象です。したがって、二種業者は、このような行為に対し、紹介料を支払うことはできないということになります。(次号に続く)

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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