グローバルレポートに対する行政処分勧告


3月11日、証券取引等監視委員会は、グローバルレポートが法令違反をしていたとして、金融庁長官に同社に行政処分を行うように勧告しました。

まずは、同社がなぜ行政処分勧告の対象となったのか、証券取引等監視委員会のサイトで確認してください。長い文章ですが、難しくはないため、すぐに読み終わります。

証券取引等監視委員会の公表はこちらで確認できます。

同社は極悪非道の悪徳業者であって、行政処分勧告の対象となったことが当然であると思わなかったでしょうか。

冷静に読むと、同社が行政処分勧告の対象となった理由は、以下の通りです。

1 同社の代表者はAであるが、Aは実質的に同社の経営に関与せず、実際には、Bが顧問として就任し、同社の実権を握っていた。Bが代表とならず、顧問に就任していた理由は、Bは兼職が制限されていたからである。

2 同社は登録申請に際し、内心では助言対象有価証券を外国証券にしたかったにもかかわらず、国内証券とした方が、登録申請のハードルが低いと考え、助言対象有価証券を国内証券と記載して、登録申請を行った。

3 同社が使用していた契約締結前交付書面には誤植があった。

4 同社は、法定帳簿を作成せず、保存していなかった。

5 事業報告書の記載において、誤植があった。

6 同社は、助言対象である外国証券について、知識が不足していた。

以下の解説は、同社が私の取引先ではなく、私は詳しい事情を調べたわけではありませんので、私の想像の域を出ないこと、また、私は同社を擁護する意図がまったくないことをご了承の上、参考としてご覧ください。

1は、私の想像では、サラリーマンだったBは、投資助言業務を行いたかったにもかかわらず、Bが勤務する会社の社内ルールで兼職(副業)を禁止していたため、Bの友人と思われるAに、Bの代わりに社長をしてくれと頼んだところ、Aが承諾したというものです。

助言業務をやりたいサラリーマンが、自分の名前を伏せたいため、友人に自分に代わって代表者となって欲しいと依頼する行為は、極悪非道でしょうか。むしろ、気持ちはわかる人の方が多いのではないでしょうか。

2は、登録申請の技術として、登録されやすいように登録申請書や添付書類を作成して登録を受けた後、別の業務を行うようにしたというものですが、これも、気持ちがわかる人がいるのではないでしょうか。実際、登録申請の技術として、このような方法を採用することを勧める行政書士がいると聞きますが、このような行政書士の方が責められるべきではないでしょうか。

3は、前書面、時書面の誤植、4は、法定帳簿の作成漏れ、5は、事業報告書の誤職だったというものですが、これらの行為は、極悪非道でしょうか。

6は、助言対象である有価証券を良く調べていなかったという指摘ですが、助言対象有価証券が外国証券の場合、調べる方法は外国証券の発行者や運用業者が公表する資料しか頼るものはなく、したがって、完全な調査をしなければ助言できないとするのは、むしろ、同社に酷ではないでしょうか。

行政処分勧告の際に、証券取引等監視委員会が公表する検査結果を見て、「極悪非道な悪徳業者だから、行政処分を受けるのは当然だ!」と短絡的に考えてはダメです。「他山の石」としなければなりません。

おそらく同社に対する行政処分は、登録取消し処分ではないでしょうか。代表者が極悪人として描かれ、登録取消し要件である「人的構成が不備」であると指摘されているからです。

繰り返しますが、私は同社と取引がなく、同社がどのような会社で、実態がどうであったか知りません。また、同社を擁護する気はまったくありませんが、以下のように考えます。

行政処分又は行政処分勧告を受けた金商業者の中には、無邪気にも証券取引等監視委員会が違法と指摘する法令違反行為を無意識に行っていた金商業者もいます。このような金商業者は、他の金商業者と大差がありません。つまり、すべての金商業者は、善良であっても、証券取引等監視委員会の検査で指摘され、登録取消し処分を受ける可能性があるということです。

よく、「行政処分を受けた会社は、本当に悪い会社ばかりじゃないですか」という方がいますが、これは真実ではありません。行政処分を受けた金商業者は無意識に法令違反をしていた、というケースが少なくありません。ただ、当然のことながら、無意識であれば法令違反をしても許されるわけではなく、だから、すべての金商業者は、全件監査を行うなどして、一切の法令違反を排除できる態勢を整備する必要があります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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