平成21年改正金融商品取引法(3)


平成21年改正金商法の売出しの定義の改正で影響を受ける有価証券は、基本的に、外国で発行された有価証券(外国証券)のみになります。

<外国証券>
なぜ、国内で発行された有価証券は、売出しの定義が改正されても影響を受けないのか。これは、国内で発行されていれば、次のいずれかの方式で発行されていることから、私売出しを考慮する余地がないからです。
(1) 不特定多数の投資家に対する取得勧誘:募集であり既に私売出しにすることが不可能だから
(2) 多数でも特定の投資家のみ対する取得勧誘:適格機関投資家私募(プロ私募)であり、プロにしか転売できないという転売制限が付されていることから
(3) ある程度多数で特定の投資家のみに対する取得勧誘:特定投資家私募であり、特定投資家にしか転売できないという譲渡制限契約が交わされていることから
(4) 不特定でも少数の投資家のみに対する取得勧誘:少人数私募であり、分割して譲渡できないという転売制限が付されていることから

国内で発行された有価証券について私売出しを考慮する必要な唯一の例外は、国内で少人数私募により発行された有価証券を適格機関投資家私売出しにより売付け勧誘等をする場合に限ります。

<法定開示が不要で外国証券情報が必要な売出し>
次の(1)から(7)の外国証券は、有価証券届出書の提出がなくても、外国証券情報の提供又は公表があれば、売出しが可能です。

(1) 外国国債(1号)
外国政府が発行する外国国債のうち、次のすべての条件を満たす外国国債。米国TBなどのことです。
① 国内おける売買価格がインターネットなどで容易に取得できること
② 外国国債又は同一の発行者が発行する他の外国国債の売買が外国で継続的に売買されていること
③ 外国政府がインターネットなどで財政情報等を日本語又は英語で公表していること

(2) 外国地方債と外国特殊法人債(2号)
次のすべての条件を満たす外国地方債と外国特殊法人債。いわゆるエージェンシー債が含まれると考えられます。
① 国内における売買価格がインターネットなどで容易に取得できること
② 外国地方債又は同一の発行者が発行する他の外国地方債が外国で継続的に売買されていること
③ 発行者がインターネットなどで財政情報等を日本語又は英語で公表していること

(3) 外国特殊法人債(3号)
次のすべての条件を満たす外国地方債と外国特殊法人債。いわゆるエージェンシー債が含まれると考えられます。
① 国内における売買価格がインターネットなどで容易に取得できること
② 外国特殊法人債又は同一の発行者が発行する他の外国特殊法人債が外国で継続的に売買されていること
③ 発行者がインターネットなどで経理情報等を日本語又は英語で公表していること

(4) 海外発行転換可能者債券(4号)
次の条件を満たす海外発行転換可能社債券。いわゆるEBが含まれると考えられます。
① 国内における売買価格がインターネットなどで容易に取得できること
② 指定外国金融商品取引所に上場されていること又は海外発行転換可能社債券が外国で継続的に売買されていること
③ 対象株券が金融商品取引所又は指定外国金融商品取引所に上場されていること
④ 発行者が外国の法令又は指定外国金融商品取引所の規則に基づいてインターネットなどで経理情報を日本語又は英語で公表していること

(5) 海外発行債券(6号)
次のすべての条件を満たす海外発行債券。グローバル・オファリングされた外国企業の発行した社債などです。
① 国内における売買価格がインターネットなどで容易に取得できること
② 外国債券の場合、指定外国金融商品取引所に上場されていること又は外国債券が外国で継続的に売買されていること(上場親会社が元利金の保証をしている場合を除く)
③ 発行者が外国の法令又は指定外国金融商品取引所の規則に基づいてインターネットなどで経理情報(元利払いの保証をしている上場親会社の経理情報を含む)を日本語又は英語で公表していること

(6) 海外発行株券(7号)
次のすべての条件を満たす海外発行株券。
① 国内における売買価格がインターネットなどで容易に取得できること
② 指定外国金融商品取引所に上場されていること
③ 発行者が外国の法令又は指定外国金融商品取引所の規則に基づいてインターネットなどで経理情報を日本語又は英語で公表していること

(7) 海外発行受益証券及び海外発行投資証券。外国ETFや外国REITのことです。
① 国内における売買価格がインターネットなどで容易に取得できること
② 指定外国金融商品取引所に上場されていること
③ 発行者が外国の法令又は指定外国金融商品取引所の規則に基づいてインターネットなどで経理情報を日本語又は英語で公表していること

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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