合同会社の分別管理1


昨晩、不動産AMのコンプライアンス担当者の方たちと集まって、6か月ぶりに食事に行きました。メンバーの一人が同業者に転職するので、祝杯をあげました。

ここで、私が投じた質問が議論(波紋?)を呼びました。

「GK-TKスキームにおいて、合同会社の銀行口座はいつく必要か」

信託銀行や一種業者を活用しない限り、金商法第40条の3、金商業等府令第125条から、最低2つは必要です。投資者から拠出された金銭を管理する銀行口座(当該金銭であることが名義により明らかなものに限る)と、合同会社の固有財産を管理する銀行口座です。

合同会社ABCの場合、「合同会社ABC出資口」という名義の銀行口座と、「合同会社ABC」という名義の銀行口座の2つが最低限必要です。

GK-TKスキームにおいて、合同会社の固有財産の管理口座として、銀行口座を最低1つは用意しないと、例えば、税金が支払えません。

ここまで読めば、実務に携わっている人なら、なぜ波紋を呼んだのかわかると思います。

そうです。合同会社の固有財産を管理する銀行口座はないという話です。

実務に携わっている人は、むしろ、いったん実務を忘れて、素直に(?)聞いて欲しいのですが、合同会社でなく、株式会社や有限会社だった場合はどうでしょうか。

株式会社や有限会社は実態を伴うため、固有財産を管理する銀行口座がないと、税金も給料も支払えないという、金商法とは無関係な理由からですが、通常、株式会社や有限会社の固有財産を管理する銀行口座があります。

合同会社であっても、同じです。

合同会社は、実態がないわけではありません。ところが、実態はあるけれども、GK-TKスキームにおいては、合同会社はSPC、つまり、箱だと実務者は認識してしまうため、銀行口座を設ける実務的なメリットがないという思い込みから、銀行口座を設けていないだけです。(当然のことながら、設けているファンドもしっかりある)

ただ、この点は、繰り返しになりますが、金商法とは関係のない話ですので、話を金商法に戻します。

営業者(ファンド事業者)の固有財産と投資者が拠出する金銭とを分別して管理せよという要請は、投資者が拠出する財産を営業者が流用することがないようにするための形式的な要件です。(金商業等府令第125条第2号)

また、平成26年改正金商法で規定された金商法第40条の3の2は、投資者が拠出する金銭が事業以外の目的に流用されていないことを担保するための実質的な要件です。

以上から、例えば、合同会社にかかる税金(均等割など)は、事業以外の目的で支払われる金銭ですから、投資者が拠出する金銭を管理する銀行口座から、直接的には支払うことができないというという結論になります。

合同会社の営業者報酬から支払うのは問題ありませんが、既述の条文から、営業者報酬は、営業者の固有財産になりますので、いったん、営業者の固有財産を管理する銀行口座に支払われなければなりません。

GK-TKスキームと同じ効果である信託を利用するスキームを考えると、信託スキームの場合、信託銀行の信託口(他人勘定と呼ばれる)で投資者が拠出する金銭が管理されるわけですが(有価証券もここで管理される)、信託銀行が「自社の税金を支払うので、信託口から相応の負担をしてもらう」と直接的に請求することはできません。自社の税金は、信託銀行の自己口(自己勘定と呼ばれる)に支払われた信託報酬の中から支払われるべきです。

GK-TKスキームの場合、実務に即して見ていくと、信託銀行から支払われた配当がレンダー口座に支払われ、レンダーのリザーブを積んだ残金がリリース口座に支払われ、リリース口座において、合同会社の税金が帳簿上経理されて積まれ、税金の支払いに充てられるのが一般的だと認識しています。

この場合、信託銀行から支払われた配当は、当然、すべて投資者に帰属すべき金銭です。ですから、レンダー口座もリザーブ口座も分別管理義務の対象の投資者から拠出された金銭を管理する銀行口座です。この金銭から、事業の目的のために行った借入金の返済をすることに何ら問題はありません。

合同会社の税金は違います。繰り返しになりますが、合同会社の税金は、事業の目的で支払われるものではなく、合同会社固有の事情で支払われる金銭ですから、投資者に帰属すべき金銭から直接的に支払った場合、既述の条文から、流用になります。

ここまで読んで、この話は、出立点が間違っていることに気づいている読者もいると思います。

合同会社には、そもそも、金商法の分別管理義務が課されていないということです。分別管理義務は、金商法の行為規制(業者規制)に規定されているに過ぎないからです。

だから、今話をしている分別管理の問題は、次の3つにわけて考える必要があります。

金商業者の関与の態様が、二種業者としてなのか、助言業者としてなのか、運用業者としてなのかの3つです。各々適用条文が異なるために、結論が変わってきます。(ニュースレターに続く)


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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
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