分別管理に関する考察


4月6日にニュースレター会員に送ったニュースレター(読者はメルマガと呼んでいる)をサンプルとして公開します。



シリーズで、分別管理に関する規定を掘り下げて考察していきます。

分別管理は、一種業者、二種業者、運用業者に係る規定ですが、一種業者の分別管理は、二種業者や運用業者に係る分別管理とは別物です。ここでは、二種業者と運用業者に関する分別管理についてまとめます。

分別管理について考えるときは、次の2点を考慮する必要があります。

1 分別管理の対象は何か

2 分別管理が確保されている状態とはどういう状態か

まず、分別管理の対象に関し、第二種金融商品取引業においては、金商法第40条の3、第42条の4、金商業等府令第125条から、組合契約における分別管理の対象は、出資持分に関して出資又は拠出された金銭に限ります。

ここで2つの疑問が生じます。一つの疑問は、出資又は拠出された金銭とは、出資又は拠出された時点における金銭のみを指すのか、出資又は拠出された金銭が有価証券に代わってしまったときの有価証券も指すのかという疑問です。つまり、分別管理の対象は、既述の通り、金銭に限るわけだから、金銭が有価証券に形を代えてしまった場合、既に金銭ではない以上、二種業者は、有価証券の分別管理の状況を確認する義務を負わないという理解で良いのか、良いとすれば片手落ちではないのかという疑問です。

具体例を挙げた方がわかりやすいでしょう。

GK-TKスキームで、当初、投資者がTK契約に基づき、金銭を出資する場合、TK契約に基づく出資持分に関する取得勧誘(実務的には私募又は私募の取扱い)を行う二種業者は、金銭がGKの固有財産及びGKが行う他の事業の財産と分別して管理されている(あるいはされる)ことを確認しなければ、出資持分に関して取得勧誘ができないわけですが、出資された金銭が有価証券に代わってしまっていた状況で、追加出資が行われる場合、二種業者は、追加出資で出資される金銭が分別管理されている(あるいはされる)ことだけを確認すれば良いのか、当初出資された金銭が形を変えた有価証券の分別管理状況も確認する義務を負うのかという疑問です。

正解は条文通りなので簡単です。二種業者は、出資された金銭が分別管理されていることを確認すれば良く、金銭が有価証券に代わってしまった場合、有価証券に関して分別管理がされているどうかを確認する義務はありません。

この結論は、いかにも片手落ちに見えますが妥当である理由は、有価証券の分別管理は、運用業者によって担保される仕組みなっているからです。

次の疑問は、二種業者は、出資又は拠出された時点の金銭の分別管理のみ確認すれば良いのか、出資又は拠出された金銭が、事業の用に供せられた後の金銭の分別管理状況も確認する義務があるのかという疑問です。後者がないと、やはり、片手落ちの感が否めません。

この問題は多少複雑です。

例えば、GK-TKスキームの場合、出資された金銭の一部が有価証券に代わっていたけれども、残部が次の投資のために金銭のままであった場合、二種業者は、残部の金銭に関する分別管理の状況を確認する必要があるのかどうか、考えなければなりません。

この場合、正解は条文通りなので簡単で、既述の有価証券同様、残部の金銭の分別管理も運用業者によって担保される仕組みになっているため、二種業者が残部の金銭に関する分別管理状況を確認する義務がないと考えても問題がないように思います。

この結論は、確かに、運用業者が関与する場合は妥当に見えますが、運用業者が関与しない場合、すなわち、事業型ファンドの場合、残部の金銭の分別管理状況を担保する仕組みがなく、この結論は片手落ちです。

この金商法の欠点を補うこと可能にしたのが、平成26年改正金商法で追加規定された金商法第40条の3の2です。

金商法第40条の3の2により、二種業者は、組合契約に関して出資又は拠出された金銭が、金銭を充てて行わるべき事業に充てられていないことを知りながら、出資持分に関して取得勧誘(実務的には私募又は私募の取扱い)を行ってはならないことになっています。つまり、出資又は拠出された金銭の用途の確認義務も二種業者は負うことになったので、分別管理の確認とは形は違うけれども、実質的に、分別管理の目的、すなわち、出資又は拠出された金銭の事業者による目的外使用(流用)を防止する措置がとられるわけです。

なお、金商法第40条の3の2が追加されたことにより、法定はされていませんが、二種業者は、金商法第40条の3に基づく分別管理状況の確認結果に係る証憑を残す義務に加え、出資又は拠出された金銭の用途に関する証憑を残す義務が生じている点に注意が必要です。なお、後者の義務は、事業型ファンドの取扱いのみならず、有価証券投資型ファンドの取扱いであっても同様です。(次号に続く)

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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