分別管理に関する考察3(AM必読)


4月8日のニュースレター(読者はメルマガと呼んでいる)です。



今回から、運用業者と特例業務届出者にとって(本来関係ないが、ときにGK-TKの助言業者にとっても)、極めて重要な話をします。「運用業務の分別管理規定」です。約200社の金商業者と接してきて、運用業務の分別管理については、中途半端に覚えている金商業者が多いという印象を持っています。一言一句、注意を払いながら読んでみてください。

運用業務の分別管理規定も二種業務の分別管理規定同様、次の2点を考える必要があります。

1分別管理の対象は何か

2分別管理が確保されている状態とはどういう状態か

加えて、運用業務の分別管理を考える場合に、重要な点は、次の点です。

3分別管理義務を負うのは誰か

先に、分別管理義務を負う者を見ていきましょう。

運用業務の場合、分別管理義務が課される者は、運用者です。GK-TKであれば、GKです。自己運用を行っているGKに分別管理義務が課されます。自己運用を行う者(自己運用者)に分別管理義務は課されるのです。しつこいようですが、ここは、運用業務の分別管理規定を理解するために忘れてはならない点です。いついかなるときでも、ぶれないようにしてください。GKが運用業者と投資一任契約を締結しても、分別管理義務を負うのは自己運用者であるGKです。

GKが金商法第63条に基づき適格機関投資家等特例業務を行っている場合はどうでしょうか。

この場合も、分別管理義務を負うのは、GKです。平成27年改正金商法の施行前までは、特例業務届出者に金商法第42条の4の適用がなかったため、特例業務届出者は、金商法第42条の4を気にする必要がありませんでした。平成28年3月1日の施行日以降、金商法第42条の4が、特例業務届出者にも適用されているので、施行日以前から適格機関投資家等特例業務を行っていた特例業務届出者に対しても、金商法第42条の4が適用されていることに注意が必要です。

運用業務においては、分別管理義務が課されるのは自己運用者ですが、唯一の例外は、自己運用者が、運用業者と投資一任契約を締結して、運用業者に運用権限の全部を委託し、諸々の条件を満たし、かつ、運用業者が金融庁に届出書を提出しているときに限り、自己運用者の運用行為は、金商法第2条第8項第15号に規定する金商業ではないため、自己運用者は、分別管理義務である金商法第42条の4の適用を受けません。

ここは、大丈夫でしょうか。具体的にいうと、GK-TKスキームで、GKが運用業者と投資一任契約を締結して、運用権限の全部を運用業者に委託し、諸々の条件を満たした上で、運用業者が金融庁に届出書を提出すれば、GKは自己運用者なんだけれども、GKの行為は定義府令により金商業に該当しない行為になってしまうので、GKは分別管理義務を負わないということです。

ここで、注意して欲しいのは、では、この場合、誰が分別管理義務を負うのか、という点です。「ぶれないようにしてください」と言った通り、分別管理義務を負うのは、いついかなるときでも、自己運用者です。この場合、自己運用者であるGKが定義府令により分別管理義務を負わないのだから、誰一人、分別管理規定の適用を受けません。運用業者も受けません。出資持分を販売する二種業者も受けません。誰一人、分別管理規定が適用される者はいません。

次回から、分別管理義務の要点である「対象」と「状態」を考察しますが、予備知識としておさえておいて欲しいのは、運用業務の分別管理義務規定は、もともと、投資信託を想定して制定されているという点です。

投資信託においては、投資者が出資した金銭も、金銭が有価証券などに形を変えた運用財産も、運用財産に付随する権利も、すべて、信託銀行に帰属します。信託は、委託者から受託者に財産名義が移転するからです。つまり、運用業務の分別管理規定は、金銭が出資されたとき、金銭が有価証券などの運用財産に形を変えて運用されているとき、配当金・分配金が投資者に支払われるときのいかなる時点でも、金銭や有価証券が自己運用者(の固有財産)から分別して管理されていなければならいという規定です。

ここは、二種業務に係る分別管理規定と違うので注意です。二種業務の場合、法律上の形式論では、二種業者は出資持分を投資者に販売してしまえば、後のことにまったく責任を負う必要がないので、二種業者に課された義務は、「出資又は拠出された金銭」が事業者の固有財産及び事業者が行う他の事業に係る財産と分別されていることを確認するにとどまり、仮に、事業者がお金を分別口座で集めた後、流用したとしても、二種業務においては、金商法は興味のない話です。(実質論では問題。また、金商法第40条の3の2)


運用業務の場合は違います。金銭が出資される段階、金銭が有価証券などの運用財産に形を変えて運用される段階、配当金・分配金が支払われる段階のすべての段階において、金銭や有価証券は、いついかなるときも、分別管理されていなければならないと法律をもって規定されています。

だから、こういうことが言えます。二種登録と運用登録をしている金商業者が、出資持分の販売とファンドの運用を行うとき、分別管理に関して、二種業務に係る分別管理規定を満足させたとしても、このことは、運用業務における分別管理規定を遵守していることを意味しません。二種登録と運用登録をしている金商業者にとって、この2つの異なる分別管理規定は混同しやすいところなので、注意してください。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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