投資顧問業協会の調査票


4月15日のメールマガジンの記事です。



今日は、一回、分別管理を休んで、投資顧問業協会の調査票についてコメントします。不動産関連助言業者と不動産関連運用業者に、今年は、4月13日が提出締切日の調査票が来ていて、クライアントから多数送られてきていたので、この機会にコメントします。

投資顧問業協会は、毎年、「調査票」を会員に送って回答させています。私のクライアントも助言業者や運用業者が多いので、拝見しますが、投資顧問業協会の着眼点は優れていると思います。

株式助言という、典型的な助言業者向けの調査票、不動産信託受益権に係る助言を行う助言業者向けの調査票、不動産信託受益権に係る運用を行う運用業者向けの調査票と分かれており、各々の重要項目にフォーカスした内容となっていて、投資顧問業協会の苦労と真剣度合いを伺わせます。

株式助言の場合、従業員取引に関する質問が充実しています。株式助言業者は、優秀であればあるほど、大手証券会社のアナリスト・レポートが足元に及ばないほど、自社が行った助言が相場に与える影響が大きくなるので、役職員、役職員と生計を一にする者が、助言業務を通じて知り得た情報を利用して株式取引をしたくなるところですが、不正な取引を避けるためにどうすれば良いのかを具体例をあげつつ、実態を調査しています。

また、広告規制については、素人が質問すると「誇大広告をしていないか」とやってしまいそうなところ、投資顧問業協会は、自社に有利な広告ばかりしてはいけないこと、一時点をとらえてはいけないことを明確にした上で、広告表現について質問しています。

不動産信託受益権に係る助言の場合、助言記録の書き方はもちろん、助言記録とともに保管すべき資料の内容について触れつつ、助言記録の保存に関して質問をしたり、これも圧巻ですが、助言を行う際に、価格の適正性をいかに担保するかについて質問をしたりして調査しています。

不動産信託受益権に係る運用の場合、利益相反取引と利害関係者取引について、細かくケースわけをして違反行為がないか、違反行為をどのように防止しているかについて質問をして調査しています。

これらは、証券取引等監視委員会の検査のポイントとも一致しており、金商業者にとって、投資顧問業協会作成の調査票は、証券取引等監視委員会の検査を見据えた自主点検の意味があり、有効な内容となっています。

また、調査票の「整備しているか」という質問に対して、金商業者が「未整備」と回答すると、後日、(金商業者にとってはしつこいくらい)電話で整備状況を確認し、整備されるまで電話をし続けるのですが、投資顧問業協会のこのサービスは、良い意味で過剰サービスと思えるくらい、充実したサービスになっています。

私が直接加入した経験のある協会は、日本証券業協会しかないですが、日証協がここまでしてくれた記憶はありません。

ですから、以下の金商業者はハンディキャップを負っているというか、損をしています。

1 投資顧問業協会に加入しない

2 調査票に真面目に回答しない

私のクラインとで投資顧問業協会に加入しない例は少数派ですが、投資顧問業協会に加入しないということは、業界スタンダードがわからないという点で既にハンディキャップを負っているところ、調査票がないので、コンプライアンス体制に関して、手探りで回答を探さなければなりません。これは、コンプライアンス体制について、投資顧問業協会に加入している助言業者から、大きく後れを取ることになります。

調査票に真面目に回答しない例は少なくなさそうです。調査票の質問一つ一つについて、自社の社内規則と照らし合わせて回答している助言業者が多いとは、私には、ちょっと思えず、記憶だけで回答している助言業者が少なくないのではと思いますが、もし、社内規則と照らし合わせながら回答すれば、一気に、「内部監査」が終了しそうなくらい(実際にはしません)、調査票の質問は充実しているのだから、真面目に、といいますが、時間をかけて回答すべきであると考えます。

二種業協会が行っている「自主点検」は、まだ、分析していませんので、コメントできませんが、投資顧問業協会の調査票は、拝見する限り、投資顧問業協会に加入しないという選択肢は、コンプライアンスの観点から(当局に向けても)、ハンディキャップを負っていると言わざるを得ず、また、調査票に真面目に、時間をかけて回答しないのは、せっかくのチャンスを生かしていないと言えます。

私は、投資顧問業協会に何の縁もありませんので、まったく独立した立場で「調査票」についてコメントしましたが、調査票の提出と提出後のフォローアップだけでも、投資顧問業協会に加入している意味があると考えます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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