内部監査の実務2


5月2日のメールマガジンからの抜粋です。



関東財務局理財部証券監督第2課から証券取引等監視委員会の検査を踏まえた「金商法ナビレター」が発行され、同日、投資顧問業協会から「検査研修」の案内が送られてきました。

また、二種業協会は、社内規則の整備状況を報告させていて、これは、平成26年改正金商法の施行日(平成27年5月29日)以降、社内規則の整備不十分は「登録取消し事由」となり、最近の検査において「登録申請時から社内規則の見直しも追加もされていない」と指摘されている状況を受けています。

以上のように、当局が検査を意識した運営を始めたことから、二種業者も助言業者も、検査対策が必須の時代に入った感があります(一種業者と運用業者はもともと必須)。

もっとも、繰り返しになりますが、検査対策と言っても特別な手立てがあるわけではなく、日常的には役職員全員が法令違反・不適切行為の未然防止を意識して業務を行い、定期的に内部管理態勢や業務執行体制の検証を内部監査部門が実施する以外に方法はありません。

余談が長くなりますが、この当たり前のことができるかどうかは、経営者とコンプライアンス担当者の意識にかかっています。何を意識するべきかというと、「コンプライアンスは経営の最重要課題だ」という抽象的なことではなく、「金商法は、常識では遵守できない」という事実です。「悪いことをしていないから大丈夫」とか「投資者に迷惑がかかっていないから大丈夫」という常識だけを信じていても、金商法は遵守できないということを意識する必要があります。

例えば、社内規則の整備。社内規則が整備されていなくても、常識的には悪いことではないし、投資者に迷惑がかからないかもしれません。でも、社内規則の整備が不十分な状態は、金商法第35条の3違反であり、登録取消し事由です。社内研修だってそう。金商業等府令第70条の2第1項は、金商業者に社内研修の実施を義務付けていますが、社内研修がなくても、誰にも迷惑をかけないかもしれません。でも、社内研修の実施が不十分な状況も、登録取消し事由です。

自社の過失から、投資者に迷惑をかければ、金銭的に償うことが投資者保護のように見えますが、金銭的な償いは、損失補てんにつながり、特別の利益の提供につながります。グループ会社で取引を完結させることは常識的かもしれませんが、金商業者がやると、利益相反取引かもしれないし、忠実義務違反かもしれません。

運用業者のファンド間取引は、双方にとって良ければ良いと判断するのが常識なら、不正が働く余地があるから禁止と考えるのが金商法です。「虚偽又は誤解を生ぜしめるべき表示」(禁止行為)と聞くと、常識的には、ウソをつく気がなければ虚偽とまでは言えないと考えますが、金商法は、事実と異なる表示はうっかりミスでも虚偽と判断するし、登録申請書に誤った記載があったり、実態を反映してない記載があったりしても、投資者はびくともしないかもしれませんが、登録取消し事由です。

以上は一例に過ぎませんが、金商業者が、金商法を遵守するためには、経営者やコンプライアンス担当者が「常識」だけで判断をしてはダメで、「金商法は、常識では遵守できない」ということを意識して判断をする必要があるわけです。

なお、投資顧問業協会による「検査研修」のスピーカーは証券取引等監視委員会(霞が関)の証券検査課長(皆さんの検査を行う部門のトップ)ですから、1社1人限定になっていますが、できれば、コンプライアンス担当者の方ではなく、経営者の方が出席すべきであると考えます。(私も、海外クライアントの代理人として出席の申し込みをしました)。

閑話休題。

今回から、内部監査の具体的な内容について見ていきます。

まず、プロセスとして、内部監査部門は、「内部監査計画」を立てて、内部監査計画書にまとめ、一般的には、取締役会の承認を得ます。取締役会がなければ、代表取締役の承認を得ることになるでしょうが、「承認」といっても、内部監査の機能は、社内のあらゆる機関・部門から独立していなければならいないので、代表取締役が内部監査計画の内容を「緩める」変更を求めることはできません。コンプライアンス委員会がある金商業者であれば、内部監査計画書は、コンプライアンス委員会の審議事項としている会社も多いです。

内部監査計画書を作成する理由は、限られた時間と人的資源の中で、内部監査を効率的・計画的に実施するためですが、多くの金商業者は、この内部監査計画書の作成の段階でつまずきます。内部監査が何をすれば良いのかわからないからです。

「内部監査は1年中やることがある」と前回説明しましたが、何から始めたら良いかがわからなければ、登録申請時に財務(支)局に提出した書類の検証から始めることをお勧めします。「登録事項検査」も意識して、登録申請時に提出した書類に記載された事項と実態とのかい離がないかを確認します。監査テーマは「登録申請時に提出した書類の検証」で良いと思います。

具体的な検証の内容については、次回以降、説明します。


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川崎善徳

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<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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