平成21年改正金融商品取引法(6)


売出しの定義の改正とは直接の関係はありませんが、証券会社が在庫の有価証券を販売する際に作成する在庫一覧表(いわゆるオファーシートなど)の取り扱いについても、金融庁は考え方を明確に示しています。

<オファーシート>
証券会社が複数銘柄のオファーシートを提供する行為、ネットで価格を提供する行為、在庫に限らず有価証券の前日終値を提供する行為は、原則として、売出しに該当します。(企業内容等開示ガイドライン2-10の括弧書き、令1条の7の3・11号に関する平成21年12月22日付パブコメ回答39の反対解釈、49、53、54、55、平成21年12月28日付パブコメ回答50、51、52参照)例外は、価格情報の提供行為が売買に寄与しない場合に限ります。(平成21年12月22日付パブコメ回答54、55参照)なお、リサーチ情報を提供して結果的に買付注文を受けたとしても、リサーチ情報の提供自体は売出しに該当しません。(平成21年12月22日付パブコメ回答41参照)

<私売出し>
発行市場(プライマリー)に「募集」と「私募」以外の取得勧誘方法がないように、流通市場(セカンダリー)にも「売出し」と「私売出し」以外の売付け勧誘等の方法がなくなります。売出しが「不特定多数」の投資家に対する売付け勧誘等であるのに対し、私売出しは「特定多数」又は「不特定少数」の投資家に対する次の3つの売付け勧誘等です。それぞれ、発行市場のプロ私募、特定投資家私募、少人数私募に相当する概念で、すべてに転売制限(特定投資家私売出しは譲渡制限契約)が付きます。
(1) 適格機関投資家私売出し(プロ私売出し)
(2) 特定投資家私売出し
(3) 少人数私売出し
(注:現行法上、特定投資家私売出しの制度が既にありますが、制度の運営が難しいため、実務上活用されている範囲は限定的です。)

なお、規制緩和の影響で、適格機関投資家私売出しの要件は、債券の場合、証券会社が作成して顧客に提供する有価証券の内容を記載した書面に転売制限(適格機関投資家以外への譲渡を禁止する制限)を記載すればよいことになりました。(令1条の7の4・3号ハ、定義府令13条の4・2項1号ロ)これに伴い、現行の適格機関投資家私募(プロ私募)の定義も同様の改正が行われています。(令1条の4・3号ハ、定義府令11条2項1号ロ)

また、少人数私売出しの要件は、債券の場合、証券会社が作成して顧客に提供する有価証券の内容を記載した書面に①一括譲渡制限又は②券面が50単位未満であり分割できない旨が記載されていることで良いとなりました。(令1条の8の4・3号ハ(3)、定義府令13条の7・3項1号イ)これに伴い、現行の少人数私募の定義も同様の改正が行われています。(令1条の7・2号ハ(3)、定義府令13条3項1号イ)(平成21年12月22日付パブコメ回答2参照)

さらに、顧客が適格機関投資家の場合、取引ごとに書面を提供する義務はなく、包括的な書面の提供や、証券会社のホームページに転売制限の内容を記載し、適格機関投資家に交付する書面に、URLを記載する簡易な方法(要顧客の同意)も可能となります。(平成21年12月22日付パブコメ付回答4、97、平成21年12月28日付パブコメ回答25参照)

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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