弊害防止措置


11月15日のメールマガジンからの抜粋です。



今回は、親法人等又は子法人等が関与する行為についてです。

親法人等と子法人等については、以前、説明した通りで、親法人等とは、親会社ばかりでなく、兄弟姉妹会社、叔父叔母会社も含む広い範囲の概念です。

金商業者は、登録申請の際、登録時点における特定関係者に関する書面を作成し、管轄金融庁等に提出し、登録後は、親法人等・子法人等に変更があったときに、届出書を提出します。

当局が、金商業者の親法人等・子法人等を把握する目的は、アームズ・レングス・ルールの適当範囲などを画するためです。

アームズ・レングスとは、「同じ腕の長さ」を指しますが、金商法におけるアームズ・レングス・ルールは、金商業者が、親法人等・子法人等と有価証券の売買等を行うときの取引条件と、親法人等・子法人等以外の者と有価証券の売買等を行うときの取引条件を同じにせよという要請です。

金商法の解説書の中に、この規制は、親法人等又は子法人等が積極的に金商業者を支援することを規制するために定められていると書いているものがあります。

これによると、アームズ・レングス・ルールは、金商業者が、親法人等・子法人等との間で有価証券の売買等を行うにあたり、金商業者にとって、他の取引よりも有利な条件で取引を行った場合にのみ適用されることになりますが、金商業者にとって不利な条件で取引を行った場合にも、適用されると考えるのが妥当です。

確かに、もともと弊害防止措置は、平成4年に、銀行による子証券設立が認められたときにできたものであり、親銀行が子証券を支援すると、他の証券会社との間で取引の公正を損なうという理由でできた規制ですが、金商法施行後は、親法人等が、子会社である金商業者から利益をむしり取る可能性が高くなったことから、平成4年の解釈を引きずることはできないと考えます。

この規定は、金商業者が、「通常の取引の条件と異なる条件」であって「取引の公正を害するおそれのある条件」で、親法人等・子法人等と「有価証券の売買その他の取引」(及びデリバティブ取引)を行うことを禁止しています。

1 通常の取引の条件と異なる条件とは、金商業者が、同じ取引を親法人等・子法人等以外の者とした場合の取引条件よりも有利又は不利な条件で取引を行うことを意味します。

2 取引の公正を害するおそれのある条件とは、競争原理に反する条件という意味です。

3 有価証券の売買その他の取引とは、有価証券の売買のみならず、有価証券の私募の取扱いや有価証券の売買の媒介も含みます。

以上の3つの要件を満たす取引は禁止です。

だから、例えば、不動産信託受益権販売業者(二種業者)が、不動産信託受益権の売主である親会社から売買の媒介を依頼された場合であって、金商業者と親会社との間の取引条件が、競争原理に反し、通常よりも低い手数料率であった場合、二種業者が、親会社と取引をすることが禁止されます。

競争原理に反するとは、金商業者が他の金商業者と比べて、競争優位に立つということで、前述の例では、他の金商業者なら受け入れられない手数料率を取引条件にしている場合が、これに当たります。



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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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