第二項有価証券(2)-信託の受益権(2)


「信託の受益権」は第二項有価証券であると金融商品取引法の2条2項にありますが、信託の受益権のすべてが第二項有価証券であるわけではありません。禅問答のようですが、有価証券には第一項有価証券と第二項有価証券しかないのですから、要するに、信託の受益権の中には、第二項有価証券ではなく、第一項有価証券であるものがあるということです。

投資信託の受益権は、信託の受益権ですが、第二項有価証券ではなく第一項有価証券です。ほかに、貸付信託の受益権、特定目的信託の受益権、受益証券発行信託の受益権が、信託の受益権ですが、第一項有価証券です。

<投資信託の受益権>
通常、投資信託と呼んでいるものは、金融商品取引法や「投資信託及び投資法人に関する法律」(投信法といいます)の投資信託の受益証券のことです。印刷された証券です。解説の便宜上、ここで簡単に投資信託の仕組みについて説明します。

投資信託は、名前の通り、「信託」ですから、「委託者」と「受託者」と「受益者」、それに「受益権」があります。通常、投資信託は、アセットマネジメント会社という会社が「委託者」になり、信託銀行が「受託者」、投資信託を購入する投資家が「受益者」です。

委託者であるアセットマネジメント会社は、投資家から集めたお金を受託者である信託銀行と信託契約を結んで、信託銀行に管理させます。受託者である信託銀行は委託者であるアセットマネジメント会社の指図に基づいて、株券や不動産などの資産を売買して、運用収益をあげます。運用収益を受け取る権利は投資信託の「受益権」となりますが、受益権の所有者、つまり、収益を受け取る権利を持っている受益者は、お金を出資した投資家になります。

以上が、通常の投資信託の仕組みの概要です。委託者は、投資信託の受益権を小口化(分割)して、受益絵証券を発行します。投資信託の受益絵証券は、印刷された証券が発行されているのですから、金商法2条1項の有価証券ですよね(覚えていらっしゃいますね)。

金商法2条2項は、信託の受益権は原則として第二項有価証券だけれども、受益証券に表示されるべき権利は例外として第一項有価証券であると定めています。受益証券に表示されるべき権利というとむずかしく聞こえますが、要するに、投資信託の受益権、つまり、投資信託の運用収益を受け取る権利のことです。

<受益証券発行信託の受益権>
「受益証券発行信託」とは、呼んで字のごとく、受益証券が発行される信託のことです。要するに、委託者と受託者が信託契約をするときに、信託契約の中で「受益証券を発行しましょう!」と決めた信託のことです。受益証券発行信託の受益証券(舌をかみそうですね)は、印刷された証券が発行されているのですから、金商法2条1項の有価証券です。

信託の受益権は原則として第二項有価証券ですが、例外として受益証券発行信託の受益証券に表示されるべき権利(確実に舌をかみますね)は第一項有価証券であると定めています。要するに、信託の受益権のうち、信託契約の中で「受益証券を発行しましょう!」と決められていたら、信託の受益権であっても、第一項有価証券になるということです。

<要注意!(中級者レベル)>
ここで注意していただきたいことが2つあります。一つ目は、不動産信託受益権は、信託の受益権の原則の通り、通常、第二項有価証券ですが、投信法の規定に基づいて発行されると、いきなり第一項有価証券である投資信託になってしまう点です。特に、不動産信託受益権に投資する不動産信託受益権を分割して複数の者に取得させようとすると、印刷された受益証券の発行予定がなくても、必ず、投資信託になります。投信法でそう決まっているからです。

二つ目は、不動産信託受益権であっても、信託契約で受益証券を発行しましょう!と決めてしまうと、いきなり、必ず、第一項有価証券になってしまうという点です。信託契約の中で「受益証券を発行しましょう!」と決められていたら、信託の受益権であっても第一項有価証券になるのですから、当然ですね。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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