会社分割による金商業承継手続


会社分割を行い、承継会社に金商業を承継させたいという金商業者から、金商業の承継手続についてコンサルティングと手続代行を依頼されることがあります。金商業を承継会社に承継させる目的は、上場企業である金商業者の組織再編等、さまざまです。

今回は、会社分割による金商業の承継手続についてお話しします。なお、新設分割で金商業を承継させることは、実務的には難しいので、吸収分割の方法を採用します。

会社分割による金商業者の承継手続は、スケジュール管理が、成功のための鍵、というより、生命線になります。だから、実際に金商業の承継を行うときには、必ず、承継手続の経験のある専門家のサポートを受けてください。

まず、承継会社がまだ存在しない場合には、承継会社となる会社を新設し、登記を済ませます。

次に、承継会社は、金商業者として登録を受けるための申請手続を行います。金商業者(分割会社)の金商業を承継させることができる者は、金商業者として登録されている者に限るからです。

登録申請手続の間、金商業者は、加入している金融商品取引業協会に、金商業者の脱会と承継会社の加入がある旨を連絡します。

承継会社の登録申請手続は、通常の登録申請手続と同じです。登録申請書、人的構成に係る書面、業務方法書などを作成して管轄財務局に提出し、審査を受けます。

承継会社が金商業者として登録を受けたら、金商業者は、金商業を吸収分割により承継会社に承継させる旨の公告を行います。なお、金商業者は、承継させる日の30日前までに公告をしなければなりません。(金商法第50条の2第6項)

公告と同時に、金商業者は、すべての営業所又は事務所の公衆の目につきやすい場所に、公告の内容を掲示します。金商業者に係る債権者に会社分割による承継の事実を知らしめるためです。

公告を行った金商業者は、直ちに、公告を行った旨に関する届出書を管轄財務局に提出します。(金商法第50条の2第7項)このとき、任意で、公告の内容を添付するようにとの指示がある場合がありますが、実務的には、公告を行う前に、内容について、管轄財務局に確認してもらうようにした方が良いです。

公告が終わると、公告で明らかにした年月日をもって、金商業者は、金商業を承継会社に承継させます。

なお、金商業者が、切れ目なく、承継会社で金商業を行わせたい場合には、公告をする前から、金融商品取引業協会への加入手続を開始しなければなりません。承継会社はADRに関する体制が整備されるまで金商業を開始することができませんから、実務的に、承継会社が金商業を開始することができるのは、金融商品取引業協会の加入日になるからです。

金商業を承継させた分割会社(元金商業者)は、金商業の廃止手続の場合同様に、原則として、証券取引等監視委員会(又は管轄財務局)の検査を受けます。ただし、実務的には、管轄財務局からの質問に対する回答を記載した書面を提出するようにとの「報告聴取命令」を受けますので、金商業者は、報告聴取命令に記載された期日までに、回答書を提出します。

質問には、法令等違反がないかを確認する内容のものが含まれています。報告聴取命令に対する虚偽の回答は刑事罰の対象です。

だから、金商業者は、法令等違反がないかを確認する報告聴取命令が出ることを想定して、事前に、法令等違反がないことを検証する内部監査を実施しておく必要があります。

私も、分割を行う金商業者の依頼に基づき、内部監査の代わりに外部監査を実施したことがありますが、法令等違反がまったくないことを確認するため、大変な作業になりましたから、監査には1か月以上必要です。

また、金商業を承継させた分割会社は、承継させた年月日から30日以内に、承継させた旨に関する届出書を、添付書類を添付して、金融庁(管轄財務局)に提出します。(金商法第50条の2第1項)

以上で、会社分割による金商業の承継手続は完了します。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

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