合理的な回答に至るまで​の考え方の道筋


1月13日のメールマガジンからの抜粋です。



昨日は、二種業者のコンプライアンス担当者の方ための勉強会である「実践会」の第一回目でした。

実践会は、事例研究を行い、結論を覚えるのではなく、結論に至るまでの考え方の道筋を身に着けることに重点を置いています。

ですから、参加者は10名限定とし、10名の方には2つのグループに分かれて事例についてディスカッションしてもらい、最後に、結論と結論に至った理由を、各グループから発表してもらうという形式をとっています。

今も実践会への参加を希望されている方がいますが、10名限定であるため、第一期生の募集は締め切っていますので、第二期生として参加してもらう予定にしています。

事例研究を行い、結論に至るまでの考え方の道筋を身に着ける演習を行うことは、コンプライアンス担当者にとって、非常に重要です。

実際、コンプライアンス担当者が機能している会社では、役員も従業員も、コンプライアンス担当者に相談したうえで、業務を進めるわけで、相談されたコンプライアンス担当者は、どんな相談にも回答できる能力が求められます。

ここで「回答」とは「正解」という意味ではありません。金商法を事例に当てはめる場合、唯一の正解が存在するわけではなく、合理的な回答が存在し得るにすぎません。

コンプライアンス担当者が、合理的な回答を出すためには、合理的な回答に至るまでの考え方が身についていなければなりません。

合理的な回答に至るまでの考え方は一朝一夕に身につくものではなく、日常業務という本番に当たって身につけるか、演習を通じて身につけるかの2つの方法しかありません。

一見、本番に当たって身につけるのが理想に見えますが、身につく前に合理的な回答を出す必要があることから、本番に当たって身につけるという方法には論理矛盾があり、結果として、演習を通じて身につけるしかありません。

私がコンプライアンスを担当し始めた30年前は、コンプライアンス担当者の役割が確定していないどころか、コンプライアンスという単語でさえ、知っている人が、100人に一人もいない時代でしたので、本番に当たって合理的な回答を出す考え方を身につける時間的な余裕がありました。

現在は、コンプライアンスの機能が、ある程度定まっているため、本番に当たっている暇がなく、考え方の道筋を身に着ける勉強会が、私の現役時代よりも、必要になっていると思います。

さて、合理的な回答に至るまでの考え方の道筋について、一般論をお話しすると次の通りです。

まず、事例に適用されると考えられる条文を特定します。条文は一つであることもあるし、2つ、3つと複数であることもあります。

例えば、金商業者が、親法人のために有価証券の売買の媒介を行ったとき、通常の条件よりも、親法人に有利な手数料率を適用した場合、適用される条文は、親子法人が関与する行為制限規定(金商法第44条の3第1項第1号)と、特別の利益の提供の禁止規定(金商業等府令第117条第1項第3号)の2つが考えられます。

次に、適用される条文が禁止規定である場合、なぜ禁止されているのか、理由を考えます。ここは、文献を参照したり、専門家に相談したりすることで、情報を集めることができます。

最後に、適用される条文を事例に当てはめて回答を出します。禁止規定の場合には、事例が、禁止される理由に該当するかを検証して回答を出します。

当てはめの際には、条文を正確に読むことが重要です。

例えば、虚偽表示の禁止規定(金商業等府令第117条第1項第2号)は、条文をよく読まないと、いかなるときにも適用されると誤解されがちですが、条文をよく見てみると、「金商契約の締結又は勧誘に関して虚偽表示を禁ずる」とありますので、金商契約の締結又は勧誘の場面以外における虚偽表示(例えば期中の虚偽表示)には、虚偽表示の禁止規定は適用されないことがわかります。

当てはめをしたところ、適用条文と思われた規定が事例に当てはまらなかった場合には、最初に戻り、もう一度、適用条文の特定に戻ります。

実践会では、事例の回答を覚えるのではなく、事例を通じて、以上のような合理的な回答に至るまでの考え方の道筋を身に着けます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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