平成21年改正金融商品取引法(8)


私売出しは、売出しにならない売付けではありますが、一方的に、売り付ける行為という点では、売出しと共通しています。従って、売出しが金融商品取引業である以上、私売出しも金融商品取引業であるべきです。結果、確かに、改正金融商品取引法でも、私売出しは金融商品取引業の一つとなりましたが、金融庁の考えの甘さから、整理が複雑になってしまいました。

<私売出しの金融商品取引業の分類>
私売出しは、「有価証券の売買」(法2条8項1号)の一種です。証券会社が顧客に有価証券を売り付ける方法は、①売出し、②私売出し、③売出しに該当しない取引の3つ以外にはありません。このうち、売出しは法2条8項8号に規定する金融商品取引業、私売出しと売出しに該当しない取引は法2条8項1号に規定する金融商品取引業と整理されました。

従って、①売出しのための法定帳簿は「売出しに係る取引記録」、②私売出しと売出しに該当しない取引のための法定帳簿は「注文伝票」になります。また、③売出しの取扱いのための法定帳簿は「売出しの取扱いに係る取引記録」となるのに対し、④私売出しと売出しに該当しない売付けの取扱いのための法定帳簿は「媒介又は代理に係る取引記録」になります。

ただし、平成21年12月28日付パブコメ回答189によると、売出しのうち、買付けの申込み又は売付けの期間を定めて行うものについては「売出しに係る取引記録」を作成し、買付けの申込み又は売付けの期間を定めていないものは「注文伝票」を作成するとあります。この金融庁の回答はまったく理解不能のおかしな考えですが、金融庁の回答として公表されてしまっている以上、こうすることになります。

<少人数私売出しの定義>
少人数私売出しの定義は、所有者が50名以上とならない場合です。現行の少人数私募と異なり、勧誘の相手方の数は問題になりません。勧誘の相手方の数ではなく、所有者の数とした理由は、勧誘の相手方の数を基準にしてしまうと、49人の顧客に勧誘し、全員が申込んだところ、キャンセルが出てしまった場合の証券会社の不都合を解消するためです。

ところが、令1条の8の3で過去1ヶ月間の勧誘の相手方の数が50名以上となった場合は私売出しに該当しないとありますので、結局、法2条4項2号ハで「所有」とした意味が失われています。金融商品取引法施行令のこの条文は、金融商品取引法の意味を失わせてしまっていますので、即、改正するべきです。

なお、少人数私売出しの50名計算を勧誘相手の数ではなく所有者の数と規定したことから、少人数私募の50名計算も、勧誘の相手方の数から所有者の数へと改正されます。(法2条3項2号ハ)

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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