フィデューシャリー・デューティー


昨日、金融庁は、(金融庁の考える)フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を実現するための原則の案を、以下で公表しました。

「顧客本位の業務運営に関する原則」


ルール・ベースからプリンシプル・ベースへの転換が述べられていますが、これは、約15年前、私がまだ現役のコンプライアンス部長だったときに、一度、金融庁が試みたことです。

しかし、当時、この試みは失敗し、証券取引等監視委員会による検査手法が、まったく変わらなかったために、金商業者もまったく変わらず、プリンシプル・ベースは、どこかに消えてしまいました。

今回は、金融庁の2度目の挑戦です。

昨年、金融庁が「平成28事務年度 金融行政方針」を、証券取引等監視委員会は「平成28事務年度 証券モニタリング基本方針」を公表しましたが、昨日の公表も含め、昨年からの金融庁と証券取引等監視委員会の動きを見ていると、金融庁の2度目の挑戦は、成功すると思われます。

さて、昨年からの金融庁と証券取引等監視委員会の動きをまとめると、以下の通りです。

1 証券取引等監視委員会は、臨店検査(onsite inspection)による金商業者の業務の検証を基本的にやめて、オフサイト・モニタリングとオンサイト・モニタリングによる金商業者の業務の検証を行うことにした。

2 モニタリングのキーワードは、以下の3つである。

ガバナンス

リスク管理

フィデューシャリー・デューティー

また、金融庁の動きが金商業者に与える直接的な影響は、以下の通りです。

証券取引等監視委員会が、検査の対象としてきた金商業者の数はのべ2000社、特例業務届出者の数はのべ6000社であったことから、これまでは、証券取引等監視委員会がすべての金商業者の業務を直接検証することは考えられなかったが、証券取引等監視委員会の業務の検証の方法が、臨店検査からモニタリングに移行した結果、今後、証券取引等監視委員会は、オフサイト・モニタリングを通じて、すべての金商業者の業務を直接検証することになる

モニタリグは、臨店検査が名前を変えたものではなく、臨店検査とはまったく異なる検証制度であることに注意する必要があります。

臨店検査は、過去の一時点の個別事案に対する法令違反を指摘し、金融庁に行政処分を勧告するものでした。

モニタリグは、「過去の一時点の健全性の確認より、将来に向けたビジネスモデルの持続可能性」に、「規制の形式的な遵守のチェックより、実質的に良質な金融サービスの提供」に重点を置いたものであり、「3つの防衛線の考え方に基づき、ビジネスモデルの分析、それを支えるガバナンスの有効性やリスク管理の適切性等に着目したリスクアセスメントを実施」するものです。

以上から、金商業者に問われていることは、以下の3つです。

1 将来に向けたビジネスモデルの持続可能性等を実現する体制を整えているか(ガバナンス)

2 真に重要な問題への対応ができているか(リスク管理)

3 実質的に良質な金融サービス(ベスト・プラクティス)を提供しているか(フィデューシャリー・デューティー)

金商業者において、これらをすべて満たしているかを最終的に検証する部門も、3つの防衛線の最後の砦も「内部監査部門」です。

だから、内部監査は従来にも増して重要になっていると考えられるわけです。

以前お話しした通り、今年はできるだけ多くの機会を捉え、内部監査についてお話ししたいと考えていますが、第2弾として、金融ファクシミリ新聞主催のセミナーの講師として、金商業者のための内部監査についてお話しします。

モニタリグ制度を踏まえた内部監査の手法に重点を置いて話しますので、興味のある方は、参加してみてください。(備考欄に「講師紹介」と書くと、受講料の割引が受けられるそうですが、詳しくは主催者にお尋ねください)

セミナー:金融商品取引業者のための内部監査の手法

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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