一から金商法


4月3日のメールマガジンからの抜粋です。



4月は新入社員の季節なので、金商法を1から、やさしく、実務的かつ実践的に解説するシリーズをお送りすることにします。新入社員の方にとってはもちろん、既に金商法を学んでいる方にとっても、実務ですぐに役立つ内容にしていきます。

初回は「目的」です。

金商法の目的は、金商法全体の鳥瞰図のようになっています。

目的規定は、一つの文で句点がないため、読点で区切って読むことにします。

「この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに」

金商法は、開示規制、行為規制(業者規制)、不公正取引規制の3つの規制から成り立つ法律です。金商法のどこを探しても、この3つの規制に係る規定以外の規定はありません。

目的規定の最初は、金商法が、開示規制について規定していることを示しています。

「金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により」

次に、金商法は、金商業者と取引所など、「市場」参加者の行為を規制する行為規制について規定していることを示しています。

「有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし」

最後に、金商法は、不公正取引規制について規定していることを示しています。

「有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り」

目的規定には複数の説がありますが、説を紹介することは文献に譲るとして、金商法は、「公正な価格形成」を図るために存在する法律であることが示されています。

金商法の目的規定の中で、最も重要なキーワードは「公正な価格形成」です。金商法のすべての条文は、公正な価格形成のためにあります。

例えば、金商法第4条に基づく有価証券の募集に関する発行者による有価証券届出書の提出義務は、発行者に大きな負担を負わせますが、なぜ、このような義務が金商法に規定されているかというと、発行者が有する情報を投資者と共有させることを通じて、発行価格の公正性を担保するためです。

金商法第4条は、発行者が示す発行価格を投資者が受け入れるか拒否するかを判断する材料(有価証券届出書)を発行者に提出させることにより、発行価格を、有価証券の供給者である発行者と有価証券の需要者である投資者が同じ情報を持ったときに需給の一致する点に落ち着かせようとする規定です。

「もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする」

金商法が目的と定めているものは、「国民経済の健全な発展」と「投資者の保護」に資することです。

「国民経済の健全な発展」とは、限りある国民資産が効率的に配分されることで求められる国民経済の発展のことを指します。成長企業に、より多くの国民資産が配分されれば、国民経済の発展が期待できるということです。

金商法第166条で、インサイダー取引がなぜ禁止されているのかというと、インサイダー取引が行われると、市場が信頼を失い、本来市場に参加する予定だった投資者が市場に参加しなくなってしまうことで、限りある国民資産が効率的に配分されなくなるおそれがあるからです。

金商法第197条で、有価証券報告書の虚偽記載が、厳罰をもって禁止されている理由は、投資者の保護もさることながら、本来、資金を調達できなかったはずの会社が資金を調達することにより、限りある国民資産が効率的に配分されなくなる結果、国民経済の発展が損なわれるからです。

各条文を読むときには、目的規定に照らして意味を理解する必要があります。

繰り返しになりますが、目的規定の最も重要なキーワードは「公正な価格形成」です。なお、公正な価格形成を実現するための市場とは、正しい情報がすべて価格に反映されている市場です。

金商法第38条で、特別の利益の提供が禁止されている理由の一つは、特別な利益が提供されると、正しい情報を持たず、本来市場に参加する予定のなかった投資者が市場に参加することにより、公正な価格形成が歪められる結果、国民経済の健全な発展や投資者の保護を損ねることになるからです。


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テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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