平成21年改正金融商品取引法(9)


証券会社の業界特有の言葉に「ワンデーシーズニング」という言葉があります。シーズニングとは、通常、ドルなどの外貨を海外にある期間置いておくことを言いますが、証券業界で「ワンデーシーズニング」というと、外国証券を海外で発行させ、発行日の翌営業日に国内に持ち込み、国内の投資家に販売する行為を指します。

どうしてそんな面倒なことをするかというと、現行法の23条の14が、外国で既に発行された有価証券についての取扱いについて特例が設けられているからです。23条の14を使うと証券会社間の取引に転売制限が付かず、証券会社と適格機関投資家の間の取引きでは適格機関投資家が転売を制限することを口約束すれば、転売制限が付かないからです。

関東財務局の実務でも、外国企業が発行する有価証券について、発行日翌日の受渡しは既発扱いとされ、売出しの対象にするために、ワンデーシーズニングが使われています。

<ワンデーシーズニング>
現行、ワンデーシーズニングで証券会社が他の証券会社に外国証券を売付けた場合には転売制限がかかりませんが、改正法施行後は、証券会社が他の証券会社に外国証券を売付けた場合であっても、私売出しである場合には、転売制限が付されることになります。さらに、証券会社が私売出しで適格機関投資家に外国証券を売付けた場合にも必ず転売制限が付されることになり、以上の結果、ワンデーシーズニングの意義が失われます。実際、平成21年12月22日付パブコメ回答60は、ワンデーシーズニングを否定し、平成21年12月28日付パブコメ回答4は、ワンデーシーズニングに募集又は私募同様の規制が適用されることを示唆しています。

なお、外国証券業者が国内証券会社の注文を受けて外国で既に発行された有価証券を売り付ける行為は、売出しに該当せず(法58条の2ただし書き、令1条の7の3・5号、令17条の3二号イ、金商業等府令213条1項参照)、外国で既に発行された外国証券を買い付けた証券会社が売出し又は私売出しを予定している別の証券会社に売付けた外国証券に売付ける行為は、外国証券の情報を日本証券業協会に報告すれば売出しに該当しないことから(令1条の7の3・6号)、いずれかの方法を選択することで、従来のワンデーシーズニングと同様の効果のある取引をすることは可能です。

もっとも、この際には、実際に外国で既に発行されていることが条件です。外国証券の発行条件を発行前に決めるという従来型の手続きは発行者(外国企業)による私募です。結果、従来型と同様の売出しを適法に行うためには、外国企業が私募で発行した有価証券を証券会社が買取引受けすることで既発とし、同時に、証券会社が売出人となって売出しを行う方法が考えられます。平成21年12月28日付パブコメ回答173(残額引受けではなく買取引受けの場合は売出人から取得した場合のみ引受けとするという内容)と矛盾するようですが、条文上は何の問題もありません。なお、この場合、証券会社は元引受けを行うことになりますので、資本金が5億円以上(発行総額が100億円以上の場合は30億円以上)でなければなりません。(令15条の7・1項、金商業等府令4条参照)

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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