一から金商法4


4月13日のメールマガジンからの抜粋です。



今日は、「顧客」についてです。

顧客の定義は金商法にありません。ですから、誰が顧客であるかは、金商業者が取引の種類ごとに確定しなければなりません。

顧客を確定する意味はどこにあるのか?

例えば、契約締結前交付書面は「顧客に対し」交付することになっていることから、顧客が誰かを確定しておかないと、誰に対して契約締結前交付書面を交付すれば法令違反にならないのか判断がつきません。

有価証券の売買の顧客は誰か。

有価証券の売買とは、金商業者自身が売買の一方の当事者となって(売主又は買主になって)、有価証券譲渡契約を成立させる行為です。このことから、有価証券の売買の顧客は、売買の相手方です。

有価証券の売買の媒介の顧客は誰か。

有価証券の売買の媒介とは、金商業者が有価証券の売買の当事者にはならず、当事者間の有価証券譲渡契約の成立に尽力する行為です。このことから、有価証券の売買の媒介の顧客は、売買の当事者の一方又は両方です。

有価証券の委託の媒介の顧客は誰か。

そもそも、有価証券の委託の媒介とはどんな行為かというと、有価証券の売買の媒介を委託された金商業者が、自らは、有価証券の売買の媒介を行わず、他の金商業者に有価証券の売買の媒介を行わせるために、委託の媒介を行う行為です。

対象となる取引は、取引所取引に限りますので、証券会社のみが行い得る行為であり、証券会社が母店証券会社に、委託を受けた株式の売買の発注を行う場面くらいしか想定できないので、母店証券会社を利用している証券会社以外の証券会社が、出くわす機会が考えにくい金商業です。

顧客は誰かというと、証券会社に有価証券の売買の媒介(正確には取次ぎ)を委託した者です。

有価証券の引受けの顧客は誰か。

有価証券の引受けとは、典型的には、発行者が募集や私募を行うとき、もし、売れ残りが生じてしまったら、金商業者が買い取る行為と、もし、売れ残りが生じたら金商業者が買い取ることを内容とする契約を発行者との間であらかじめ締結する行為です。(いずれも、一種業務)

以上の定義から明らかなように、有価証券の引受けの顧客は、有価証券の発行者(売出しの場合は所有者)です。

有価証券の募集又は私募の顧客は誰か。

有価証券の募集又は私募は、自己募集・自己私募という金商業者の行為であり、行為の相手方となるのは、取得勧誘を行う取引の相手方であることから、有価証券の募集又は私募の顧客は、取引の相手方(取得者)です。

有価証券の売出しの顧客は誰か。

有価証券の売出しとは、金商業者が所有する既に発行された有価証券を多数の者に売り付ける金商業者の行為です。このことから、有価証券の募集又は私募の場合同様、有価証券の売出しの顧客は、取引の相手方です。

有価証券の募集の取扱い、私募の取扱い、売出しの取扱いの顧客は誰か。

有価証券の募集の取扱いも私募の取扱いも、発行者のために、発行者に代わって、新たに発行される有価証券の取得勧誘を行う行為です。したがって、有価証券の募集の取扱い、私募の取扱いの顧客は、有価証券の発行者です。(売出しの取扱いの顧客は有価証券の所有者)

ただし、「顧客が誰であるかは、投資者保護の観点から個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきもの」であることから(平成19年7月31日パブリックコメント274頁16以降)、取得勧誘の相手方である取得者も顧客として取り扱うことが、求められています。

助言・運用については、後日、説明します。


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テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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