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公正な価格形成が重要な理由


8月9日のメールマガジンからの抜粋です。


証券取引等監視委員会は、ヤマゲン証券が金商法違反行為を行ったとして、金融庁に行政処分勧告を行いました。

認定された法令違反は、作為的相場形成です。作為的相場形成とは、主に、上場株券が取引される株式市場において、実勢を反映しない作為的な相場形成になると知りながら、自己売買又は委託売買を行う行為です。

作為的相場形成のうち、最も多い事例と考えられるのは、終値形成(終値関与)と呼ばれる、引け値を作為的に上げる又は下げる注文を発注する行為です。今回の指摘も、終値形成であるようです。

なぜ、作為的相場形成は禁止されるのでしょうか。

理由は、金商法の目的規定から考えるべきです。

金商法は、有価証券の公正な価格形成を図ることをもって、投資者の保護と国民経済の健全な発展に資することを目的とする法律です。

公正な価格形成とは、すべての取引参加者が市場に存在するすべての正しい情報を共有している中で、需要と供給が交わる一点で決まった有価証券の価格のことです。

この場合の有価証券は、(表示されるべき権利を含む)株券に限らず、社債や投資信託などの第一項有価証券も、信託受益権や組合等出資持分などの第二項有価証券も含みます。

第二項有価証券に関しては、「価格は当事者間の交渉で決まるので、取引ごとに異なる」と堂々という人がいますが、金商法は、一点に決まると考えています。証券取引等監視委員会の検査官の言う「一物一価」です。ですから、第二項有価証券であっても、複数の価格が存在することは、本来、認められず、したがって、複数の価格が存在した場合、いずれかの価格が「不公正な価格」であると認定されも文句が言えません。

実務と金商法の考え方にずれがあるかもしれませんが、有価証券の取引においては、実務より、金商法が優先されます。なぜなら、不公正な価格は、投資者の保護と国民経済の健全な発展を阻害し、日本経済の崩壊につながりかねないからです。

有価証券の価格が公正でなかった場合、有価証券の価格を公正であると信じて売買を行った投資者は、売買を行った時点で、既に負けているおそれがあり、したがって、不測の損害を被る可能性が極めて高いことになります。投資者は、このような投資者保護が図られない市場を信用しないため、このような市場に参加しません。

投資者が市場に参加しないと国民経済の健全な発展が阻害され、日本経済は崩壊します。なぜなら、企業は資金調達手段を失うからです。単純な例をあげれば、誰一人株式市場に参加しなければ、株式会社は成り立たず、株式会社が経済の主な担い手である日本経済は崩壊します。

また、国民の財産は有限であることから、適正に配分される必要があります。具体的にいうと、例えば、株式市場においては、成長産業の株券が買われ、衰退産業の株券は敬遠されることによって、限りある国民財産が成長産業に投資される必要があるということです。

限りある国民財産は適正に配分されることによって、国民経済の健全な発展が実現するという考え方です。

もし、衰退企業が、虚偽の有価証券届出書なり、有価証券報告書なりを作成し、投資者から資金を調達すると、成長産業に向かう国民財産は減ることになり、ひいては、国民経済の健全な発展を阻害し、日本経済が崩壊します。

このことから、有価証券報告書などの虚偽記載は、最も重い刑事罰を科されるわけです。

わかりやすく、株券を例にとってお話ししましたが、すべての有価証券の発行は、資金調達手段であることから、この考え方は、社債や投資信託、信託受益権や組合等出資持分に関しても同じであることは、既述の通りです。

検査事例に話しを戻すと、作為的相場形成は、公正な価格形成を阻害し、ひいては、日本経済の崩壊を招くことから、金商法で禁止されているわけです。


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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。


JSL行政書士事務所
Tel: 03-5533-8785

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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