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ソーシャルレンディングのリスク:投資家向け


クラウドファンディングで検索していたところ、融資型クラウドファンディングを扱っているある会社のサイトがありました。融資型クラウドファンディングは、ソーシャルレンディングとも呼ばれます。

このサイトの運営会社は、二種登録を受けています。宅建の登録もしていて、「こんなに多くのライセンスがある」と宣伝しています。

また、「少額で不動産投資家ができます」という内容の宣伝文句で投資家を募集しています。

知っていればわかることですが、実際には、このサイトからソーシャルレンディングに参加する投資家がお金を出しても、不動産投資をすることはできません。投資家は、不動産を所有することもなければ、不動産に対する権利を取得することもありません。

匿名組合契約で集めたお金で不動産の取引をすることは、原則禁止されているので、投資家のお金が不動産投資に回る可能性はほぼゼロだからです。

ここで、「ほぼ」ゼロといった理由は、このサイトの運営会社が、違法取引をしていれば別だからです。

このサイトの運営会社が取り扱うソーシャルレンディングにお金を出す投資家は、不動産投資ができないどころか、「危険なかけ」をしているというのが事実です。

このサイトの運営会社が取り扱っているソーシャルレンディングの仕組みは、こうです。

1 不動産会社出身者がサイトの運営会社を作り、サイトの運営会社が、ソーシャルレンディングにお金を出す投資家を募集します。

2 ソーシャルレンディングにお金を出す投資家は、サイトの運営会社か関連会社(以下「貸金業者」といいます。)と「匿名組合契約」を締結します。

3 匿名組合契約で投資家からお金を集めた貸金業者は、マンションなどを建設する不動産開発会社に投資家から集めたお金を貸し出します。

4 不動産開発会社は、貸金業者や銀行などから借りたお金で土地を買ったり、マンションなどを建設したりと不動産開発事業を行います。

5 貸金業者は、不動産開発事業で利益を得た不動産開発会社からお金を返済してもらいます。

6 投資家は、不動産開発会社からお金を返済してもらった貸金業者から、配当金や分配金を受け取ります。

以上をよく読んでもらえばわかるように、ソーシャルレンディングにお金を出した投資家は、不動産を所有することもなければ、不動産に対する権利を取得することもありません。

ですから、このような仕組みで投資家からお金を集めたこのサイトの運営会社が、「少額で不動産投資ができます」という宣伝文句で投資家を集めているのは、投資家に著しい誤解を生じさせる表示をしていることになり、金商法第38条違反である可能性があります。

また、このサイトの運営会社は、「不動産のプロなので、優良物件に投資しています」のような宣伝文句を使っていますが、投資家は不動産に投資をしていないのですから、優良物件がいくら値上がりしても、投資家が儲かることはありません。

さて、このサイトの運営会社が提供するソーシャルレンディングの仕組みのどこが、「危険なかけ」なのでしょうか。

投資家が出したお金は、何に形を変えているかを知ることがポイントです。

ソーシャルレンディングの仕組みからわかるように、投資家が出したお金は、最終的に、不動産開発会社に対する「貸付け」になっています。

このサイトの運営会社は、宣伝文句の中で「担保があるから安心です」といっていますが、この担保は、この「貸付け」に伴い設定された担保のことを指しています。

では、不動産開発会社が倒産したとき、投資家は担保を売却したお金から、優先的にお金を取り戻すことができるでしょうか。

できません。

なぜなら、投資家からお金を集めたお金は、「メザニンローン」に形を変えているからです。

ローンは、大きく分けると、「シニアローン」と「メザニンローン」に分かれます。そして、お金を貸し付けていた会社が倒産して、担保を売約したお金は、「優先的」に、「シニアローン」を出している銀行などに返済されます。

メザニンローンは、シニアローンの返済の結果、余ったお金がもしあれば、返済を受けることができるローンのことです。

ですから、担保があれば、銀行は、貸したお金が全額取り戻せる可能性が高いですが、担保があっても、投資家は、銀行が全額取り戻した後、まだ余りがあったときにのみ、お金を取り戻すことができるにすぎません。

余談ですが、銀行は、このような仕組みだから、お金を貸し出しています。

例えば、不動産開発会社が借りたお金のうち、銀行が出したシニアローンが全体の50%、投資家が出したメザニンローンが全体の50%であれば、仮に、担保の価値が70%になっていても、投資家にお金が戻らないだけで、銀行は100%返済してもらえる仕組みになっているから、お金を貸すのです。

メザニン

以上から、メザニンローンが危険なことを理解してもらえたと思います。

ソーシャルレンディングで投資家が出したお金はメザニンローンに形を変えているのですから、ソーシャルレンディングにお金を出す投資家は、「危険なかけ」をしているといえるわけです。

ただ、投資家に勘違いしてもらいたくないのは、この仕組みが、悪いわけでないという点です。(宣伝文句は違法の可能性あり)

メザニンローンは、シニアローンの返済がすべて済んでから返済されるローンなので、リスクが高いローンである代わりに、リスク・リターンの一般的な関係から、利率が高いです。

ですから、ソーシャルレンディングの仕組みをよく理解したうえで、「リスクをとってでも高い利回りでお金を運用したい」と考える投資家は、ソーシャルレンディングにお金を出しても良いわけです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。


JSL行政書士事務所
Tel: 03-5533-8785

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、金融商品取引法専門メールマガジンを200社を超える金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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