コンプライアンス・リスク管理


11月20日のメールマガジンからの抜粋です。



金融庁が「平成29事務年度金融行政方針」で「コンプライアンス・リスク管理」について言及しています。

コンプライアンス・リスク管理とは何でしょうか。

「リスク」は「危険」と訳されることが多いですが、「不測の事態が生じる可能性」のことです。

コンプライアンス・リスクというと、「検査で指摘されるリスク」と誤解する人がいますが、コンプライアンス・リスク管理とは、「コンプライアンス上の問題が発生してしまったときに生じ得る不測の事態を想定し、予め対応策を講じる活動」のことです。

従来のコンプライアンスとコンプライアンス・リスク管理の違いについてお話しするために、レピュテーション・リスクを例に取り上げると、従来のレピュテーション・リスク管理は、企業の評判が傷つくことがないようにするための事前法務活動の一つでしたが、コンプライアンス・リスク管理の文脈でレピュテーション・リスク管理といえば、レピュテーション・リスクが顕在化したときに生じ得る不測の事態を想定し、予め対応策を講じておくリスク管理活動を指します。

一般に、リスクとリターンはトレードオフの関係にあり、企業活動においては、リスクと収益がトレードオフの関係にあります。リスクを冒さなければ収益を生まないということです。

私は、現役のコンプライアンス部長時代から、コンプライアンス・リスク管理を「将棋」に例えて説明しています。将棋で最も強い形は、何もしない、最初のコマを置いた形です。ここからコマを進め、王将・玉将が相手にとられるリスクにさらされる中で勝敗が決まるのが将棋です。

企業活動も同じで、企業で最もコンプライアンス・リスクに強い形は設立したときの形、何もしないときです。ここから事業を行い、企業がコンプライアンス・リスクにさらされる中で収益を上げるのが企業活動です。

したがって、企業がコンプライアンス・リスクにさらされるのは当然であり、コンプライアンス・リスクが顕在化したときに企業が受けるであろうダメージを企業の「損失額」という数字で計測し、計測された損失額を上回る収益が期待できる場合には、リスクを冒すというのも、コンプライアンス・リスク管理の一つの考え方です。

こういうと、「ということは、コンプライアンス・リスク管理って、儲かるなら、法令違反をしてもいいってことか」と言い出す人が現れそうです。

ここでしている話は、法令や諸規則を遵守することは当然の前提であり、コンプライアンス・リスク管理を将棋に例えたように、コンプライアンスを強調するあまり、完全防御をすると、企業活動が必要以上に制約されてしまい、企業がまったく収益を生まずに潰れてしまうおそれがあるという話です。

コンプライアンス担当者が、何でもかんでも、OKを出してしまうのは大問題ですが、コンプライアンスを完璧にしたいがために、役職員の行動を必要以上に制限したり、役職員を委縮させてしまったりしては、企業の損失額(逸失利益)が多き過ぎる場合があります。

コンプライアンス担当者は、「コンプライアンス・リスクと企業収益は、トレードオフの関係にある」という視点を失わないことが大切だと考えます。



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テーマ : 金融商品取引法
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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。


JSL行政書士事務所
Tel: 03-5533-8785

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、金融商品取引法専門メールマガジンを200社を超える金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
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