検査危機(5)


検査は過去に起きたことが対象だから、過去に起きてしまった法令違反は取り返しがつかない、見つかったら必ず営業停止や登録抹消になるかというとそれは違います。

<自浄能力>
同じ過去の法令違反であっても、検査で発見されるのと、自社で発見したのではまったく性質が異なります。自社で発見できたということは、その会社は、「自浄能力」があると認められるからです。金融商品取引業だって人間のやることですから、間違いもあるでしょう。その間違いを自社で発見して改善することができるかどうかは、検査の大きなポイントの一つです。

法令違反があったにもかかわらず、経営者も内部監査部門もコンプライアンス部門も誰も発見できない「社内体制」が問題なのであって、法令違反が起きた時に、すぐにどこかでアラームが鳴って自社で発見して改善できる力、「自浄能力」がある会社は、法令違反があっても、処分の対象にならないケースが多いのが実情です。

<事故届出>
ただ、いくら自浄能力があって、法令違反が発見されて、再発防止策ができたとしても、起きてしまった法令違反は過去のことですので変えられません。ですから、社内で法令違反が発見されたときには、金融商品取引法の規定通りに、正直に、金融庁や管轄財務局に報告することが大切です。

法令違反や不適切な事案を監督当局に報告することを、業界では「事故届出」と呼んでいます。いくら改善したからといって、法令違反を発見しておいて事故届出を提出しなければ、2重の法令違反になってしまいます。最初の法令違反と、法令違反を発見したときの監督当局に対する報告義務違反という2つの金融商品取引法の条文に違反してしまします。

第二種金融商品取引業や投資助言業務のみを行う会社には、営業その他の業務から完全に独立した内部監査部門がない会社がたくさんありますが、内部監査部門がないのであれば、ないなりの工夫を凝らして、日々、内部監査を行い、起きてしまった法令違反が容易に発見される会社の仕組みを作らないと、検査には耐えられません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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