検査危機(7)


証券取引等監視委員会または財務局の検査が入る前に確実にやっておかなければ行政処分になり得ることはたくさんありますが、100%行政処分の対象になることがありますので、これだけは、自己責任でしっかり行ってください。

<契約締結前交付書面>
契約締結前交付書面は、会社の事業の特徴ごとに内容が異なりますので、各社各様の契約締結前交付書面を作成することが必要になります。契約締結前交付書面の記載が正確ではなかったために、意図せず法令違反として、営業停止になっているケースが見受けられます。契約締結前交付書面の作成段階で失敗している会社があるということです。

次のいずれかに当てはまる金融商品取引業者は、要注意です。

1. 契約締結前交付書面は、ひな形を使っている。

2. 契約締結前交付書面は、他社が使用しているものを使っている。

3. 契約締結前交付書面は、弁護士・行政書士に作成してもらっている。

<ひな形の失敗>
証券会社の契約締結前交付書面は、日本証券業協会がひな形を会員に公表していますが、それでも各社各様の契約締結前交付書面を工夫して作成し、使用しています。同じように、「ひな形」を使っているという金融商品取引業者は、第二種金融商品取引業を行う会社にも、投資助言業務を行う会社にもありますが、各社各様の対応が必要です。

金融商品取引法の施行当時、不動産信託受益権の売買を行っている会社の契約締結前交付書面を見せていただいたことがあります。どこの誰が作った「ひな形」か知りませんが、残念ながら(?)使い物にならないものでした。今はないと思いますが、金融商品取引法の施行当時は、ひな形自体が間違っていたこともあったということです。

ひな形の間違いであっても、それを使ってしまっては法令違反です。でも、横並びで使用している分には、まだ、「言い訳」ができる範囲かもしれません。問題は、ひな形はあくまでサンプルで、内容は、各社各様にならざるを得ないにもかかわらず、サンプルをそのまま使用しているため、会社の実態にあっていない契約締結前交付書面を使っている会社があることです。特に、重要な部分を修正しないで使用している会社は、残念ながら救われようがありませんので、ひな形を使用されている会社は、もう一度、ひな形を読み直し、会社の事業の実態にあっているかどうかを確認するようにしてください。

<他社が使用しているものを使っている>
これも、ひな形同様、まったく同じ業態で、まったく同じ事業を行っている他社が使っているからといって、自社で使えるかというとそうはいきません。

<弁護士・行政書士が作成したものを使用している>
これは、初めから救いようがありません。繰り返しますが、金融商品取引法に通じている弁護士は限られていますし、行政書士はいません。ですから、当初から、使い物になりません。私は、弁護士や行政書士から相談を受けることがありますが、決まって、重要な箇所が間違っています。サンプルが限られていますので、一概には言えないのかもしれませんが、少なくても、私が相談を受けた限りでは、正しい契約締結前交付書面を見たことがありません。最近は、見る機会がなく、改善されているかもしれませんが、決まって、重要な部分が間違っています。

特に第二種金融商品取引業や投資助言業務のみを行っている会社のコンプライアンス担当の方は、契約締結前交付書面を、必ず、自社の事業実態に合っているかどうかを確認するようにしてください。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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