検査危機(8)


私は、囲碁で日本棋院から2段の認定をいただいています。囲碁を本格的に始めたのは最近ですが、将棋は7歳の頃に始めました(将棋の棋力のはかり方がわからないので、棋力がわかりません)。囲碁も将棋も、最低でも次の3手(自分が打つ手、相手の打つ手、それに対して自分が打つ手)読まないとゲームになりません。私は囲碁はまだ2段なので、10手程度手先まで読むのが限界ですが、それ以上に先を読む方は大勢いらっしゃいます。

当局検査も似たところがあります。「当社がこう言うと、検査官はこう返して来るだろう、だから当社は前もってこういう準備をしておく」というような読みが必要になる場面が多いです。本来、検査に対して特別な準備など必要なはずはなく、法令通り、社内規則通りに業務をしていれば、何事もないわけですが、だからこそ、できる限り完璧な対応をしようとするのであれば、読みが必要になってきます。せっかくきちんとやっていたのに、言い忘れては大変ですから。一方の検査官も「こちらがこう出ると会社はこう来るだろうから、そのときはこの手を出す」という読みをしているものです。

<読みが外れた場合>
囲碁も将棋も読みというのは、考えられるあらゆる相手の手を想定して数種類の展開を想定するものですが、想定外の手が打たれて、「それは読んでいなかった!」ということがあります。想定していない手が出てきたときの対応こそ、大切なものです。

検査期間中も「その質問は想定していなかった!」という質問を受けることがあります。そのときに、絶対にやってはいけないことは、想像など不確かな回答をすることです。必ず「調べますので時間をください」と回答しなければダメです。想定外の質問を受けると、焦って、思い込みで間違った回答をしてしまう人がたくさんいますが、間違った回答であっても、検査官には間違いなのかどうなのかわかりませんから、後で事実と異なることがわかったら、虚偽(ウソ)の回答をしたとみなされるおそれがあるからです。

<待ってもらう時間の確認>
「調べてから回答します」という場合、どれくらいの時間がかかるか、締め切りを検査官に明示することも大切です。検査官も仕事ですから、検査官自身の締め切りがあるわけで、調べるのにどの程度の時間がかかるのか、それが1時間なのか1日なのか3日なのかを明示しなければなりません。検査官が「1時間もあれば調べられるだろう」と思っていたのに、3日もかかったら、それは検査を遅延させる「検査妨害」になりかねません。

<あうんの呼吸はない>
このように、検査する側と検査を受ける側との間には、あうんの呼吸はない!ということは、金融商品取引業者の全役職員が理解しておかなければなりません。経営者やコンプライアンス担当者は、普段からこのことをすべての役職員に理解させる義務があります。法律上の義務ではありませんが、検査妨害は、結局、経営者の経理管理態勢の問題と法令遵守態勢の問題ととらえられるからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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