平成21年改正金融商品取引法(12)


今年4月1日施行となる改正金融商品取引法に関する動きが本格化してきました。日本証券業協会が、証券会社に対して、各社が取扱っている外国証券の報告を求めています。既に、各社とも、改正金商法に対する対応は進んでいると思いますが、今回(2月5日付)の日本証券業協会の報告要請をもとに、あらためて、改正金商法の一部をおさらいしておくことにします。

<売出しの種類>
現行法上、売出しとは、既に発行された有価証券を均一条件で50人以上に勧誘する行為です。均一の条件が外れたこと、また、その結果、50人の通算期間(1ヶ月)が設けられたことは既にお話したとおりです。

現行、売出しとは、50人以上に勧誘するのであれば相手が適格機関投資家だけであっても、すべて、例外なく、「法定開示」(有価証券届出書の提出)が必要です。売出しは、一種類しかないわけです。

4月1日以降、売出しは3種類に分かれます。1つが、現行法通り「法定開示」が必要な売出し、これが原則です。2つ目は、法定開示が不要な売出しです。現行法にはありません。2つ目の法定外字が不要な売出しは、さらに、「外国証券情報」の提供又は公表が必要な売出しと、外国証券情報の提供も公表も不要な売出しの2つに分かれます。合計、売出しは3種類に分類されることになります。

<外国証券情報の必要な外国証券>
法定開示の対象にならない外国証券の売出しの原則は、外国証券情報の提供又は公表が必要な売出しです。外国証券情報は、発行者情報と証券情報の2部構成の情報で、販売しようとする証券会社が作成し、更新します。まさに、法定開示の必要な売出しは、発行者が、企業情報と証券情報の2部構成の有価証券届出書を作成して財務局(外国法人の場合は常に関東財務局)に提出し、有価証券報告書や臨時報告書で企業情報を更新していくのと同じで、法定開示の不要な売出しは、証券会社が、発行者情報と証券情報の2部構成の外国証券情報を作成して、投資家に提供・公表し、更新情報を証券会社が提供するというもので、法定開示の簡易版という位置付けです。

<外国証券情報の不要な外国証券>
逆にいうと、3つ目の分類である法定開示も不要で、外国証券情報の提供・公表も必要ない売出しとは、投資家が何の情報も得られない外国証券ということになります。現行の売出しの中でも、投資家が何の情報も得られない国内債券があります。国債と地方債と特殊法人債です。日本国債や東京都債などの債券は、①投資家が価格情報を容易に取得できて(地方債の価格情報は日本証券業協会が毎日公表しています)、②発行者が(日本国とか東京都など)が発行する債券が継続的に売買されていて「価格の透明性」が認められ、③財政情報が公表されています。これだけの情報があれば、有価証券届出書の提出は必要ないというのが金融商品取引法の考え方です。

同様の考え方が、外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(政府保証のあるものに限る)にも採用された結果が、3つ目の分類の法定開示不要で外国証券情報の提供・公表不要の外国証券です。つまり、①投資家が国内における価格情報を容易に取得できて、②発行者(米国など)が発行する債券が外国で継続的に売買されているために価格の透明性が認められ、③財政情報が日本語か英語で公表されている外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(政府保証のある者に限る)が、売出しにもかかわらず、法定開示や外国証券情報の提供・公表という特別な手続きを必要としない外国証券です。

<日本証券業協会での確認義務>
ところが、ここで一つ、改正金商法に、日本国債等と外国国債等で取り扱いが異なる点が規定されています。外国国債等の場合には、2社以上の証券会社が取り扱っていることが、もう一つの要件として追加されました。この意味は、まったくわかりません。おそらく、流通性の問題が考慮されたのだと思いますが、2社以上の証券会社が取り扱っていることと、流動性との間には何の関係もありません。ですから、この規定は、まったく理解できないおかしな規定です。

おかしな規定ですが、既に決まってしまった規定ですので、日本証券業協会は、証券会社各社に自社で取り扱っている、あるいは取り扱う予定がある外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(政府保証があるものに限る)の一覧を提出するように要請しました。これは、改正金商法の具体的な取組みの第一段です。

なお、この報告は、証券会社各社は、実際に取り扱っている外国国債等のみを報告するのではなく、取り扱う予定の外国国債等も報告しなければならない点に注意です。(証券情報等提供公表府令13条3号参照)

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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