平成21年改正金融商品取引法(13)


前回お話した日本証券業協会の報告要請(平成22年2月5日付)について、「アンケート」と勘違いしている証券会社があるようですが、これはアンケートではありません。改正金商法で定められた証券会社の義務です。重要視せずに流していて、中身をよく読んでいない、あるいは読んでも意味が理解できていない人を実際に見かけました、この報告は改正金商法施行に伴う証券会社の義務であり、ある意味で権利でもあります。報告対象は、前回もお話ししましたが、現在取り扱っている外国国債等の情報ではなく、改正金商法施行後の今年の4月1日以降に継続的に取り扱う予定の外国国債等です。あらためて注意してください。

<売出しに該当しない取引>
50人以上の販売であっても、売出しに該当しない販売があります。例えば、上場株券の売買。上場株券の売付けが売出しに該当しては大変です。上場会社は、毎日、有価証券届出書を提出しなければならなくなってしまいます。なお、現行の売出しの定義においても、上場株券の売買は売出しから除かれていますが、証券取引法のときから、売出しの定義に「均一の条件」があったそもそもの理由は、上場株券の売付けを外すためです。

<外国証券業者の売付け>
外国証券業者は、金融商品取引業者として国内で登録を受けていないため、原則として、国内投資家に対して有価証券の売買など金融商品取引業を行うことができません(法58条の2本文)。ただし、取引相手が金融機関など一定の投資家である場合は、金融商品取引業を行うことが可能です。このうち、特に証券会社とその他の適格機関投資家に対する外国証券の販売は、改正金商法で売出しに該当しないと規定されました。

外国で、日本でいう証券業務を行う会社が、国内の証券会社とその他の適格機関投資家に外国証券を販売する行為は、国内の投資家の数が50人以上であっても売出しに該当しないということです(令1条の7の3・5号)。この条文について、「外国証券業者が外国証券を国内投資家に販売する際に、国内証券会社が媒介や代理をしても、同様に売出しに該当しないと考えてよいか」というパブリックコメントが出ています。

これに対して金融庁の回答はあいまいですが(平成21年12月22日パブコメ回答25)、そもそも売出しに該当しない有価証券の売買を媒介や代理をしても、売出しに復活する(?)わけはありませんので、外国証券業者の適格機関投資家に対する外国証券の販売を国内証券会社が媒介や代理をする場合、国内証券会社の行為は、「売出しの取扱い」ではなく、「売買の媒介又は代理」になると考えるのが論理的です。

<法定帳簿>
従って、外国証券業者が適格機関投資家に外国証券を販売する行為を媒介又は代理する際の法定帳簿は、「売出しの取扱いの記録」ではなく「媒介又は代理の記録」ですので、ご注意ください。外国証券業者の適格機関投資家に対する販売に限らず、令1条の7の3各号に規定されている取引は、すべて、売出しではありませんから、「売出しの記録」や「売出しの取扱いの記録」が登場する場面はありません。基本的に「注文伝票」か「媒介又は代理の記録」です。

<法58条の2ただし書きの注意点>
なお、令1条の7の3・5号は、法58条の2ただし書きのうち、外国証券業者が適格機関投資家に販売する行為は売出しに該当しないと規定しています。ところが、法58条の2ただし書きには、適格機関投資家との取引を規定した条文がありません(令17条の3)。従って、外国証券業者が適格機関投資家に販売する行為がすべて含まれるわけではありません。令17条の3に規定する取引のうち、適格機関投資家と行う取引に限定されていますので要注意です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード