平成21年改正金融商品取引法(14)


前々回から続いてお話している平成22年2月5日付の日本証券業協会からの外国国債等に関する報告要請ですが、前回と前々回の話をよく読んでくださった方であれば、次の疑問が出てくるのではないでしょうか。

「外国証券業者が保有する外国国債等の国内適格機関投資家向け販売の媒介や代理のみを行う当社の場合、今回の報告対象は『該当なし』でよいのか?」

今回の報告対象は「売出しだけれども外国証券情報の提供の必要のない外国証券」に関する報告です(証券情報等提供公表府令13条3号)。要するに「売出し」に該当する取引の対象になる外国証券のみです。ところが、外国証券業者が保有する外国国債等の適格機関投資家向け販売は、売出しではありません。従って、理論的には、外国証券業者が保有する外国国債等の適格機関投資家向け販売の媒介か代理しかしていない証券会社は、「該当なし」で報告することになります。

もっとも、媒介・代理のみでなく、いったん外国証券業者から買い付けてから国内投資家に販売するケース(国内店頭取引)が絶対にない!と言い切れる証券会社以外は、今回の報告対象に、4月1日以降も継続的に媒介・代理する予定の外国国債等を報告しておくことをお勧めします。

<転売制限等告知書の内容の変更>
改正金商法で、顧客に交付すべき転売制限の内容が変わります。ご参考までに、社債の販売に関する転売制限等告知書のサンプルを掲載します。なお、現在日本証券業協会が公表している、既発外国証券の販売の際の転売制限等告知書の参考様式は廃止されます。ですから、各社で作成することが求められます。

<プロ私募及びプロ売出し共通の転売制限等告知書記載事項>
取引相手が適格機関投資家のみである場合には、私募であっても私売出しであっても(プライマリーであっても、セカンダリーであっても)、以下の内容の転売制限等告知の内容を勧誘資料などに記載すれば足ります。

汎用的記載事項
今般、当社が貴社に取得の申し込みの勧誘又は売付け勧誘等を行う本書に記載された有価証券につきましては、①当該有価証券の有価証券発行勧誘等(金融商品取引法(以下「法」といいます。)第4条第2項本文に規定するものをいいます。)又は有価証券交付勧誘等(法第4条第2項本文に規定するものをいいます。)が適格機関投資家向け勧誘に該当することにより、当該有価証券発行勧誘等又は当該有価証券交付勧誘等に関し法第4条第1項の規定による届出が行われていないこと、及び②当該有価証券が定義府令第11条第2項又は第13条の4第2項に定める要件に該当するものとして適格機関投資家(法第2条第3項第1号に規定する者をいいます。)に譲渡する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されておりますことをお知らせ致します。

<少人数私募及び少人数私売出し共通の転売制限等告知書記載事項>
少人数私募及び少人数私売出しの場合には、次の2通りを使い分ける必要があります。通常は、前者を使うのが良いと思います。現在各社で行っている少人数私募の実務を変更する必要がないからです。一方、証券会社が他の証券会社に卸販売をするケースで、他の証券会社が売出しをする場合には前者を使用し、売出しをしない場合には後者を使用するのが実務的だと考えています。

一括譲渡制限付きの場合
今般、当社が貴社に取得の申し込みの勧誘又は売付け勧誘等を行う本書に記載された有価証券につきましては、①当該有価証券の有価証券発行勧誘等(金融商品取引法(以下「法」といいます。)第4条第2項本文に規定するものをいいます。)又は有価証券交付勧誘等(法第4条第2項本文に規定するものをいいます。)が少人数向け勧誘(法第23条の13第4項に規定するものをいいます。)に該当することにより、当該有価証券発行勧誘等又は当該有価証券交付勧誘等に関し法第4条第1項の規定による届出は行われていないこと、及び②当該有価証券を取得し、又は買い付けた者がその取得又は買付けに係る当該有価証券を一括して譲渡する場合以外に譲渡することが禁止される旨の制限が付されておりますことをお知らせ致します。

券面分割制限付きの場合
今般、当社が貴社に取得の申し込みの勧誘又は売付け勧誘等を行う本書に記載された有価証券につきましては、①当該有価証券の有価証券発行勧誘等(金融商品取引法(以下「法」といいます。)第4条第2項本文に規定するものをいいます。)又は有価証券交付勧誘等(法第4条第2項本文に規定するものをいいます。)が少人数向け勧誘(法第23条の13第4項に規定するものをいいます。)に該当することにより、当該有価証券発行勧誘等又は当該有価証券交付勧誘等に関し法第4条第1項の規定による届出は行われていないこと、及び②当該有価証券の枚数又は単位の総数が50未満である場合において、当該有価証券の性質によりその分割ができない旨又は当該有価証券に表示されている単位未満に分割できない旨の制限が付されておりますことをお知らせ致します。

テーマ : 金融商品取引法
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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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