平成21年改正金融商品取引法(15)


ワンデーシーズニングについて、証券会社間で議論が分かれているようです。私は、①発行日前の勧誘は取得勧誘でああること(流通していない以上売付け勧誘等ではあり得ないこと)、②平成21年12月22日付パブコメ回答60は、ワンデーシーズニングを否定していると読めること、③平成21年12月28日付パブコメ回答4にあるように、新発も既発も同じ規制が適用されることから、ワンデーシーズニングは成り立たないという主張ですが、先日、ある証券会社の決済担当の方から「ワンデーシーズニングしないと、時差の関係でモノが確認できないという理由から、適格機関投資家がワンデーシーズニングを希望する例がある」という話を聞き、実際、ワンデーシーズニングを継続する証券会社があるとも聞いていますので、実務がどこに落ち着くのか、見守る必要がありそうです。

<証券会社への卸し販売について>
ワンデーシーズニングが可能か否かで最も影響を受けるビジネスは、証券会社が他の証券会社に外国証券を卸し販売する業務です。理由は、「売出しに該当しない有価証券の取引」を規定する令1条の7の3・6号にあります。

普段はやりませんが、証券会社にとっては重要な条文ですので、今回は、問題の条文をそのまま掲載します。

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譲渡制限のない海外発行証券を取得した金融商品取引業者等又は適格機関投資家(以下この号において「売付け金融商品取引業者等」という。)による他の金融商品取引業者等(当該譲渡制限のない海外発行証券を他の者に取得させる目的で買い付ける者に限る。以下この号において「買付け金融商品取引業者等」という。)に対する当該譲渡制限のない海外発行証券の売付け(売付け金融商品取引業者等又は買付け金融商品取引業者等が認可金融商品取引業協会(金融庁長官が指定する一の認可金融商品取引業協会に限る。以下この号及び第一条の八の四第四号において同じ。)の会員である売付けに限る。)であつて、当該売付け金融商品取引業者等(当該売付け金融商品取引業者等が認可金融商品取引業協会の会員でない場合には、当該買付け金融商品取引業者等)より当該譲渡制限のない海外発行証券の銘柄、数その他の内閣府令で定める事項が認可金融商品取引業協会に報告されるもの
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<ワンデーシーズニングの意義>
金融商品取引法関連の政令と省令(内閣府令)は、金融商品取引法以上に読みにくく、わかりにくいです。掲載した条文も例外ではありませんね。

重要な単語だけを取り上げて読み替えると、「証券会社が、転売目的のある他の証券会社に既発の外国証券を売付ける行為は、売付けた証券会社が、売付けた外国証券の銘柄や数などを日本証券業協会に報告すれば、売出しに該当しない」という意味です。既発の外国証券を証券会社が海外から仕入れて、他の証券会社に卸し販売する行為は、日本証券業協会に報告する限り、売出しにならない、つまり、何の開示制限も受けないということです。(なお、売り手が証券会社以外の場合は、買い手の証券会社が日本証券業協会に報告する義務があります。)

もちろん、買い付けた証券会社は私売出しをするのであれば、転売制限をつけて顧客に販売しなければなりませんが、売付けた外国証券には転売制限がつかないという意味です。これは、現行のワンデーシーズニングとまったく同じ効果です。ですから、ワンデーシーズニングを「既発」と解釈することが認められるとすれば、証券会社への卸し販売については、4月1日以降も現行通りの手続き・方法を継続することが可能だということです。

外国証券の販売の実務においては、証券会社が仕入れた外国証券を、転売を目的とする他の証券会社に卸し販売する実務が多いことを考慮すると、改正金商法下でも、ワンデーシーズニングは意義があることになります。

テーマ : 金融商品取引法
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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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