平成21年改正金融商品取引法(16)


4月1日以降、売出しの定義の改正と私売出しの導入で、証券会社が日本証券業協会に報告する事項が追加されます。日本証券業協会が、2月10日に「外国証券の取引に関する規則」(以下「JSDA規則」)の改正案を公表しましたので、ここで、追加される報告事項についてまとめてみることにします。

<外国証券の卸し販売>
既に発行された外国証券を取得した証券会社が、転売を目的とする他の証券会社に外国証券を卸し販売する場合、卸し販売をした証券会社が、販売した外国証券について一定の事項を日本証券業協会に報告すれば、卸し販売した証券会社の販売行為は、売出しに該当しない取引になります。

報告する内容は、販売した外国証券の銘柄、数量、発行者の名称、本店所在地と、社債の場合は、償還期限、利率、通貨、他社株転換社債の場合は、償還期限、利率、通貨、対象株券の発行者、剰余金の配当等の内容、他社株転換社債以外の仕組債の場合は、償還期限、利率、通貨、仕組債に付された権利の内容です。(令1条の7の3・6号、定義府令13条の3・1項、JSDA規則32条2項)

なお、卸し販売が売出しに該当しない取引である理由は、転売目的で買付けた証券会社が売出しを行うのなら法定開示が行われるし、私売出しを行うのなら転売制限が付くので、国内の投資者保護に、実質的な影響がないからでしょう。

<少人数私売出し>
外国証券を少人数私売出しで販売する証券会社は、販売した結果、過去1ヶ月間を通算した所有者の数が50名未満となるように管理しながら販売しなければなりません。ところが、数社が同一の外国証券を少人数私売出しで販売すると、所有者は100人にも200人にもなり得ます。

そこで、外国証券を少人数私売出しで販売した証券会社は、一定の事項を日本証券業協会に報告することが義務付けられます。日本証券業協会は、報告された所有者数を合算し公表します。そして、所有者の総数が1000人となったとき、いかなる証券会社も同一の外国証券を少人数私売出しで販売することが禁止されます。

報告する内容は、販売した外国証券の銘柄、数量、発行者の名称、本店所在地と、社債の場合は、償還期限、利率、通貨、他社株転換社債の場合は、償還期限、利率、通貨、対象株券の発行者、剰余金の配当等の内容です。(令1条の8の4・4号、定義府令13条の7・9項、JSDA規則32条3項)

なお、なぜ1000人なのか、私には理由がまったくわかりません。売出しでも所有者の数が1000人未満になるものも少なくありません。この規定は、21社の証券会社が販売証券会社になって売出しを行ったのとまったく同じです。言い換えると、21社の証券会社が会合し、各社とも私売出しを行うことに決め、有価証券届出書の提出も目論見書の交付も省いて外国証券を国内で販売できるという意味の規定です。金融庁が何を根拠に1000人としたか、私には情報がなくわかりませんが、1000人は多すぎです。

<外国証券情報の提供・公表不要の外国国債等>
外国証券のうち、外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(政保債に限る)の3つの債券は、①日本国内での売買価格が容易に取得でき、②発行者が発行する外国証券が外国で継続的に取引されていて、③発行者が財政(経理)情報を日本語か英語で公表している条件に加え、④2社以上の証券会社が継続的に取引していることを販売する証券会社が「確認」できれば、外国証券情報の提供や公表をしなくても、売出し(50人以上に対する勧誘)ができます。(令2条の12の3・1号、2号、3号、証券情報等提供等府令13条3号)

証券会社は、外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(政府保証債に限る)の外国証券売出しを行う場合には、日本証券業協会に報告しなければなりません。(JSDA規則32条・5項)日本証券業協会は、証券会社に報告を受けた情報を公表します。(JSDA規則32条・6項)

なお、JSDA規則の案32条・5項の「及び第3号に規定する要件を満たす有価証券」は、「及び第3号(外国又は外国地方公共団体が元利息の支払いを保証しているものに限る)に規定する要件を満たす有価証券」とすべきです。こうしないと、証券情報提供公表府令13条3号が外国特殊法人債につけた条件の意味がなくなってしまうか、又は単に日本証券業協会が過剰報告を証券会社に課すかのいずれかになってしまうからです。

以上の通り、4月1日以降、証券会社には日本証券業協会に対する3つの報告義務が追加されます。

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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