平成21年改正金融商品取引法(17)


今回は、仕組債の販売にトピックを絞って、4月1日以降の実務はどうなるかを具体的に検討してみましょう。

<仕組債の性格>
仕組債は、基本的に、すべて外国証券です。なぜなら、仕組債は額面未満で償還される可能性あるところ、日本では額面100円の社債を100円(以上)で償還しないとデフォルトになるからです。ですから、仕組債の販売は、外国証券の販売を考えれば良いことになります。

<仕組債の売出し>
外国証券の売出しには、①法定開示が必要な売出し、②法定開示不要で外国証券情報の提供・公表が必要な売出し、③法定開示も外国証券情報の提供・公表も不要な売出しの3種類があるということは既にお話した通りです。

<法定開示が必要な売出し>
法定開示が必要な売出しは、4月1日以降も、現行の手続きに変更はないと考えています。現行の手続きとは、投資家による申込期間が発行日以前であって、受渡日は発行日の翌営業日になるというワンデーシーズニングを前提とした手続きです。法令が予定している手続きとは異なりますが、関東財務局(外国企業の有価証券届出書はすべて関東財務局所管)が採用している実務ですので、変更なしと見ています。

変更があるとすれば、(こちらこそ法令が予定している実務ですが)仕組債を売出しではなく、募集で販売する方法が採用されることです。国内証券会社は募集の取扱いを行うということです。売出しでも募集でも、発行者は国内に代理人を定めて有価証券届出書を提出すること、証券会社は目論見書を交付することは変わりませんので、募集が市場慣行と変わってもおかしくありません。

<外国証券情報の提供・公表による売出し>
外国証券情報の提供・公表による売出しが可能な仕組債は、外国特殊法人を発行者とする仕組債です。

特殊法人債の売出しは、①国内の売買価格が容易に取得でき、②発行者が発行している特殊法人債が外国で継続的に売買されていて、③発行者が経理情報を日本語か英語で公表していることが必要です。

②の要件が一般企業が発行する仕組債と異なります。外国特殊法人が発行する社債の場合、②の要件は、発行された社債そのものではなく、同一の特殊法人が発行する他の社債が外国で継続的に売買されていればOKです。一方、外国の一般企業が発行する社債の場合、②の要件は、発行された社債そのものが外国で継続的に売買されていなければなりません。

国内で販売される仕組債が、外国で継続的に売買されることはないでしょうから、発行者が特殊法人である仕組債に限り、外国証券情報の提供・公表による売出しが可能になると考えます。これは、4月1日以降に初めて可能となる実務です。

<開示も情報提供も不要な売出し>
開示も情報提供も不要な売出しは、①売買価格情報、②継続売買要件、③財務情報の公表がされている外国国債、外国地方債、外国特殊法人債(外国又は外国地方公共団体が元利払いを保証するもの、つまり政保債)の3つに限定されます。

外国特殊法人を発行者とする仕組債は、①から③の要件を満たし、かつ発行された仕組債そのものが政保債であった場合には、開示規制は一切受けません。

もっとも、発行された仕組債に関する開示規制が適用されないだけですので、その他の義務、例えば、証券会社による契約締結前交付書面に基づく説明義務など、開示規制と関係のない義務は、当然ですが、免除されません。

次回は、仕組債の私売出しについて検討します。

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
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