平成21年改正金融商品取引法(18)


今回の話は、証券会社で仕組債の販売を直に担当している方でないとわからないかもしれない、かなり技術的な話であることをご了承ください。

今回は、私売出しの導入に伴い、4月1日以降の仕組債の販売、の実務への影響を具体的に検証します。ワンデーシーズニングを前提にしなければ、現行制度のプロ私募か少人数私募を採用すれば良いだけの話ですので、ここではワンデーシーズニングを前提として検証します。かなり具体的に書きますので、その他の方法も含めて、各社でご検討する際の参考にしていただけると幸いですが、必ず、社内で検討するようにしてください。ここで書いた方法が正しいとか最良であるという保証はいたしかねます。

<私売出しを利用する方法>
適格機関投資家のみを相手とする場合には、プロ私売出しを使えば良いだけの話ですので、ことは簡単です。また、適格機関投資家以外の者にも販売する予定があれば、少人数私売出しで行けば、やはり、ことは簡単です。ただし、少人数私売出しを選択すると、日本証券業協会への報告が生じます。日本証券業協会に対する報告事項につきましては既にコメントしていますので、そちらを参照していただけるとわかりますが、仕組債の場合は、かなり面倒です。

問題になるのは、証券会社が別の証券会社に仕組債を卸し販売する方法です。証券会社が別の証券会社から仕組債を仕入れて販売するケースはとても多いですし、この件について「4月1日以降、どうすれば良いでしょう?」という相談も多いです。

<最終投資家が適格機関投資家の場合>
証券会社は適格機関投資家ですので、もし、別の証券会社から仕入れた証券会社が、適格機関投資家に販売する予定なら、プロ私売出しとして取り扱えば良いので、簡単ですね。卸し販売する証券会社が、プロ私売出しの転売制限を付けて、別の証券会社に販売すれば済むことです。

もし、そうでない場合、つまり、最終投資家が適格機関投資家の場合もその他の投資家の場合もあり得るとか、その他の投資家のみの場合の対応が一番難しいでしょう。

<卸し販売の例外規定を利用する方法>
素直に条文を読むと、おそらくこの卸し販売の例外規定を利用するのが最良のように見えると思います。令1条の7の3・6号を利用する方法です。この方法を採用する際の検討課題は、①この方法を利用できる大前提である販売しようとする仕組債が海外で既に発行されていることをどう担保するかという点と、②日本証券業協会への報告体制をどうするかという点です。

①は、ここではワンデーシーズニングを前提としていますので、仕組債の発行者を外国法人Aとし、別の外国法人Bが仕組債を取得し、発行日の翌営業日に国内に拠点のある証券会社が外国法人Bから買い付け、別の証券会社に卸し販売することになるでしょう。したがって、1日分のファンディングコストがかかる外国法人Bの確保が課題になります。

②は、これは仕方がありませんので、報告書を埋める者を誰にするのかという点のみが課題になります。営業部門なのか、決済部門なのか、その他の部門なのか、各社各様に対応するより他ありません。

なお、卸し販売の例外規定を利用する方法を採用する場合の日本証券業協会への報告義務者は、卸し販売をした証券会社です。最終投資家に販売する証券会社ではありません。もっとも、最終投資家に販売する証券会社は、少人数私売出しで最終投資家に販売する際に、日本証券業協会に報告する必要があります。

<少人数私売出しを利用する方法>
卸し販売をする証券会社が、転売目的の他の証券会社に少人数私売出しで販売する方法も有力候補です。ただし、この場合、少人数私募に付けるのと同じ転売制限をつけることになりますので、だったら、少人数私募にすれば良いと私は考えます。少人数私募の方が、卸し販売の例外規定を利用する場合の課題として書いた①と②を考慮しなくても良いことから、少人数私売出しを採用する場合よりも、手続きは遥かに楽です。

でも「どうしても既発でないと困る」という事情があるのであれば、卸し販売の例外規定を利用する方法と同様の2つの課題に加え、③49人管理を誰がどうやるのか(これは現行制度でも同じです)、④転売制限を「一括譲渡制限」とする場合の弊害と「単位未満分割禁止制限」とする場合の弊害を検討する必要があります。

「一括譲渡制限」と「単位未満分割禁止制限」のいずれを採用するかは、各社の事情によりますが、一般論として、私は、「単位未満分割禁止制限」を採用するのが実務的だと考えます。最終投資家が複数いても問題がないこと、また、平成21年12月28日付パブコメ回答47で金融庁は「単位未満に分割できない場合でも、部分買入れをすることは、所有者の数が増えないので可」と回答しているからです。(次回に続く)

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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