平成21年改正金融商品取引法(19)


今回は、前回に引続き、仕組債を証券会社が仕入れて、他の証券会社に卸し販売する方法について、4月1日以降、どうすれば良いかについての検証です。前回同様、かなり技術的な話ですので、仕組債の販売を直接担当されている方でないとわからないかもしれないこと、また、前回同様、ここで紹介する方法が正しいとか最良であるということは保証しかねますことをご了承ください。さらに、私は、「4月1日以降に現行のワンデーシーズニングを採用するのは絶対に不可である」という立場ですが、ここで取り上げる方法は、ワンデーシーズニングを前提としていますこともご了解ください。

<令1条の7の3・5号を利用する方法>
令1条の7の3・5号は、既発の外国証券を外国証券業者が国内証券会社に売り付ける行為は売出しに該当しない取引と規定しています。すると、次の方法で最終投資家に販売することが可能です。
① 外国法人Aが発行する仕組債を、外国証券業者である別の外国法人Bが取得する。
② 外国法人Bは、発行日の翌営業日に「最終投資家に販売する国内証券会社」に直接売り付ける。
③ 国内証券会社は、転売制限を付けて最終投資家に販売する。

この方法の採用を検討している証券会社があるという話を聞いたことがありますが、この方法を採用するメリットがどこにあるのか甚だ疑問です。

卸し販売の例外規定を利用する方法と同じように外国法人Bを確保する必要がありますが、外国法人Bは外国証券業者でなければならないことになり、一つ要件が増えます。また、国内証券会社が、少人数私売出しで販売する場合には、やはり、日本証券業協会に報告しなければなりません。しかも、報告義務者は、卸し販売の例外規定を利用する場合と異なり、最終投資家に販売する証券会社のみになりますので、販売証券会社の負担は、卸し販売の例外規定を利用する場合よりも重くなります。(なぜなら、卸し販売の例外規定を利用する場合、最終投資家に販売する証券会社は、卸し販売をした証券会社が作成した報告書を見て作成すればよいからです。)

<外国特殊法人を利用する方法>
最も利用価値が高いと考えられる仕組債は、外国特殊法人を発行者とする仕組債を取り扱うことです。外国特殊法人債は、①国内の価格情報が容易に取得でき、②発行者が発行する有価証券が外国で継続的に取引されていて、③経理情報を日本語か英語で公表している場合には、販売しようとする証券会社が、外国証券情報を作成して、投資家に提供するかインターネットなどで公表していれば、販売することができるということは、繰り返してきた通りです。

外国特殊法人債ではなく、外国の一般企業が仕組債を発行した場合には、発行された仕組債自体が外国で継続的に売買されていなければなりませんが、外国特殊法人が発行した仕組債の場合、発行された仕組債自体が外国で継続的に売買されていなくてもよく、他の社債などが売買されていれば、証券会社は、外国証券情報の提供や公表をするのみで、転売制限をつけずに、仕組債を販売することができます。

証券会社の手間といえれば、外国証券情報の更新ですが、外国特殊法人が公表している経理情報(公表情報と呼ばれます)を参照することができますので、頭で考えるよりも難しくないはずです。

何と言っても、転売制限が付かないところが優れています。それでいて売出しに該当しない取引ですから、当然のことながら、法定開示が不要ですし、目論見書の交付も不要です。もちろん、日本証券業協会に報告する必要もありません。私が、考え付く中では、4月1日以降の仕組債の販売方法として、最も現実的な方法です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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