第二種業者の検査のツボ(1)


第二種金融商品取引業の登録を受けている会社(第二種金融商品取引業者)に対する証券取引等監視委員会の検査が最近目立ちます。なぜ目立つかというと、検査の結果、行政処分の勧告を受けて、金融庁や財務局から行政処分を受けて、金融庁のホームページや新聞で報道されているからです。そこで、証券取引等監視委員会の検査のうち、特に、第二種金融商品取引業者に対する検査の実態や検査対策をシリーズでまとめてみます。

<検査官の数>
第二種金融商品取引業者に限りませんが、検査を行うのは基本的に所管財務局です。関東財務局の所管であれば関東財務局の証券検査官が検査に入ることになります。理由は、金融商品取引法で、証券取引等監視委員会は財務局長に検査の権限を委任できることになっているからです。ただ、まれに証券取引等監視委員会が検査を行う場合があります。

サンプル数が少ないので確かではないですが、私に相談される第二種金融商品取引業者の方の話を総合すると、財務局の検査であっても、証券取引等監視委員会の検査であっても、いずれにしても、規模の小さな第二種金融商品取引業者で、検査官の人数は主任検査官を含めて5名前後のようです。5名前後の社員が運営している第二種金融商品取引業者は多いですから、要するに、検査官の数は、社員総数と同じか、それ以上の数だということです。

<時間と場所の確保>
財務局にしても証券取引等監視委員会にしても、検査官は、日常業務の邪魔をしないようにと気を遣ってはくれますが、気を遣う義務はありません。社員総数3人の第二種金融商品取引業者に6人の検査官が入った話を聞いたことがありますが、こうなると検査を受けた第二種金融商品取引業者は、日常業務ができません。

日常業務ができないということは、つまり、営業が停止してしまい、検査期間中は社員の給与も稼げなくなることがあり得るということです。検査官が1ヶ月間、オンサイト検査を続ければ、1ヶ月間は収益ゼロの可能性があるという意味です。なお、オンサイト検査とは検査官が現場で調査(検査)をすることを指します。

また、社員3人の会社に検査官が6人来ると、社員が仕事で使うスペースがほとんどなくなる(会社によってはまったくなくなる)ケースがあり得ます。実際、そういう検査があった話も聞きます。

以上のことからわかるように、検査が入ると仕事の「時間と場所」が制約されることがあります。でも、これは仕方がないことです。金融商品取引業者として登録を受けるということは、この覚悟があるということを暗に意味するからです。

<日頃からの準備が大事>
「そんな。1ヶ月も営業する時間も場所もなくなったら、うちの会社はつぶれちゃうよ。」と思う第二種金融商品取引業者の経営者の方がいらっしゃいましたら、悪いことは言いません、今すぐ、第二種金融商品取引業者をやめることをお勧めします。金融商品取引法は、最長6ヶ月の営業停止を金融商品取引業者に課すことができると規定していますから、少なくても、6ヶ月間は営業停止になっても生き残るだけの体力は必要です。

もっとも、6ヶ月間も営業停止でも生き残れるだけの体力(財務内容)がある第二種金融商品取引業者はほとんどいないと思います。なので、日頃からいつ検査が入っても問題がないように「準備」しておくことが大切です。準備といっても、特別な準備は必要ありません。金融商品取引法に書いてある通りに業務を続けていれば、まかり間違っても、営業停止になることはありません。

<検査官の役割>
多くの第二種金融商品取引業者が検査を受けるのは初めてでしょうからわからないのもムリはありませんが、「営業停止はあるのでしょうか」とか「行政処分ですかね」と検査官に尋ねる経営者が散見されるようです。営業停止があるのかないのか、行政処分があるのかないのかを検査官に尋ねてもムダです。当局は「検査をする部隊」と「行政処分を決める部隊」は異なるからです。検査官に行政処分のことを聞くのはお門違いです。

検査官の役割は、わかりやすく言えば、レントゲン写真をとることです。レントゲン写真の技師に過ぎません。撮影されたレントゲン写真を見て、悪いところがあるかないかを判断するのは医者であるように、検査結果を見て、営業停止にするほど悪いところがあるかないかを判断するのは別の部隊です。

これは、すべての金融商品取引業者にとって「基本中の基本」の常識ですので、知らなかった第二種金融商品取引業者の方は、そういうものだということを覚えて於いてください。これを知らなかったので、「どうもありがとうございました。おかげでいい検査ができました」と主任検査官に言われて「これで何もない」と安心していたところ、数ヵ月後に財務局から「3ヶ月の営業停止」という処分を受けて唖然としてしまった第二種金融商品取引業者の話をよく聞きます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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